すべて伝えた。自分のもてる限りの力で自分の中にある気持ちを根こそぎだ。だがそれは押し付けたとも言えたかもしれない。しかし、今となってはそれはどっちでもいいことのように思えた。今はおどろき、戸惑っているの口から言葉がほしかった。 「クリフトとわたしは幼馴染で、それはきっとこれからも変わらないのだと思いました」 が小さく、ゆっくりと、でもはっきりとした声でしゃべりだす。 「でも、わたし、気付いちゃったんです。このままではわたしたちは一緒にいられない、と。幼馴染という関係は深いようで本当はとても浅い。それをこの旅で毎日痛感しました。あなたの隣を歩くことが当然だったこれまでとはもう違うのだって。正直、クリフトが違う女性の隣を歩く様子がとても辛かったんです」 そういって彼女はふわり、笑った。 「そして気付きました。わたしはクリフトが好きです。あなたなしでは生きていけそうにないんです」 心臓が大きく脈づいた。目が自然と見開かれた。が、私を、好き。 「ずっと一緒にいて、何も変わらない日常にいたから気付きませんでした。でも、旅に出てやっとわかったんです。自然と遠ざかっていくわたしとクリフトの距離が辛くて寂しくて……」 私もそれを感じてましたよ。なんだ、私たち同じことで悩んでたんですね。ミネアさんのいっていたとおりですね。 「でも自分から言うこともできなくて、そしたらに告白をされて……。クリフトにこのことを話してもしも祝福されたらそのときはと付き合おうかと考えてました。彼はわたしのことをよく理解してくれていますしとてもいい人ですから。辛い片思いを続けていられるほどわたしは気丈ではないし、お互いの今後を考えればこのまま何も言わず、わたしの中だけで終わっていけばいいんだと思っていましたから」 そしてクリフトは彼女を抱きしめた。できるだけ優しく、愛が伝わるように、と。私たちは抱きあったってキスをしたって許される仲になった。それは決して幼馴染ではできなかったこと。 「、付き合ってくれますか?」 「……はいっ!」 元気のいい返事ののち、は泣き出してしまった。の乱れる呼吸が、身体で伝わってくる。耳元で聞こえるの啜り泣きの声は、今まで生きてきたなかで一番近い距離で伝わってきた。 「泣かないでください。ね?」 「は、はいっ、で、でも、嬉しくって……」 ぽんぽん、と落ち着かせるように背中を優しくたたく。すると彼女は徐々に落ち着きを取り戻していた。自然と二人は離れた。見つめあうと、が目を細めて笑った。 「これからは、クリフトの隣を堂々と歩いていいんですね」 「手だって、つなげますよ」 「つっ、つなぐんですか!?」 「い、え、いやっ、そ、その……それはちょっと……」 「恥ずかしいです」 クリフトが“恥ずかしいです。”と言う前にが悪戯っぽく言ってみせた。 「さすが。……私が何を言うかなんてお見通しですね」 くすくすと笑って「ええ」と言った。 「だって、私はあなたの“恋人”ですから。ね、クリフト?」 「……照れますね」 恋人という甘い響きにクリフトの心臓が破裂しそうになった。 「、クリフト」 「!!……」 ウッドデッキに突然の来客。――だった。どことなく穏やかではない雰囲気が漂う。言わなくては、とクリフトが意を決して口を開いた瞬間が先にしゃべりだす。 「こんなことじゃないかって思ってたんだ。はクリフトが好きで、クリフトがのことを好きなのは俺も知ってたから」 「!? 知ってたんですか?」 とクリフトが同時に驚くと、は「仲がいいね」と笑った。 「二人を見ていればわかるさ。でもやっぱり俺はが好きだったから、思い切って告白したけど……それが起因して二人がくっつくきっかけになれたなら、俺も満足だよ。には、幸せになってほしいから」 「……」 「クリフト、のこと幸せにしないと俺が奪っちゃうからね?」 「は、はい! 幸せにします……!」 「よろしい。……じゃあ、あとはお二人で」 は爽やかな笑顔を浮かべてテラスから出て行った。彼にはとても悪いことをしたと思ったが、明るく送り出してくれたので胸のつかえが取れたような気がした。――躊躇いの日々に手を振って、私たちはこれからどこへでもいける。 「明日、みんなに報告しましょうか」クリフトが提案する。 「そうですね」が頷く。 「幸せにします」クリフトがの肩をつかむ。 「はい……」が目をつぶる。 そして唇を重ねた。 躊躇いの日々に 手 を振って (幸せになりましょう。) ためらいの恋……いかがだったでしょうか? 初めての完結した長編……いや中編? なので、なんとか頑張ろう! と思ってやってきたのですがこれを読んでくださった貴女さまの心を少しでも楽しませられたら、と思います(*''*) これからも青山と、そしてLAのことをどうかよろしくおねがいします! |