彼女の事が、好き、なのかもしれない。そう意識してから、もう何日経つのか。相変わらず彼女とは平行線。 「ああ、どうしましょう……」 心底困ったように、目の前のはいった。今にも泣き出しそうな彼女に、思わずこちらだよ、と教えてしまいたくなるがそれではいろいろと興ざめだ。だから、ぐっとこらえる。 「こんなに真剣に考えてるの、初めてです」 「でしょうね。こんな真剣なは、私もはじめて見ましたよ」 場所は、宿屋のロビー。現在導かれし者たちご一行は、トランプに励んでいた。もはや名物にもなってきた、とクリフトのババ抜きのビリ決定戦を、とっくのとうにあがった人たちが面白そうに見つめる。ババ抜きをすると、たいていこの二人が残るのだ。 「うーん……こっち、ですか?」 ハートの5のトランプに手を持っていき、首を傾げてたずねられるが、クリフトは「さあ」と笑みを浮かべた。 「では、こっちですか?」 「いい加減、とっちゃいなさいよ」 「はい、姫様」 しょぼんと、眉を下げて、ジョーカーをためらいなく引いていく。ああ、そっちじゃないのに。なんて心の中で思いながらを見ていると、彼女は引いたカードを見た瞬間表情を強張らせて動きを止めた。 「どうやらまたがジョーカーを引いたらしいね」 がの頭を優しく撫でて、まるで慰めているようだった。クリフトはそれを見て、ずきりと心臓が悲鳴を上げるのを感じた。思わず視線を逸らして、二人を見ないようにする。 「って、いうかってさーに優しすぎない?」 マーニャの言葉が胸を刺す。その言葉は、恐ろしいくらい鋭利で、冷たくて、残酷な言葉だった。 「そうかな?」 少し照れたようにを見る。そしてが不思議そうに「そうですかね?」と言った。あまりには自覚がないようだが、周りから見ればはに十分すぎるほど優しいように思えた。当人たちはあまり気づいていないようだが。 「さんは、ご自覚なさってないようですな」 トルネコが豪快に笑った。クリフトは、笑い事じゃない。と思った。の、に対する特別な優しさを自身が認識してしまった。これはつまり、の好意が浮き彫りになってしまったと同じで、そして浮き彫りな好意は、相手を意識させる。 漠然とした不安がクリフトの胸に浮かぶ。 (もし、が、さんと付き合ったら……) 考えて、ぞっとした。心に計り知れないほどの錘がずしりとのっかってきたかのようだった。はただの幼馴染だ。今までも、そしてきっとこれからも。たとえに恋人ができたとしても、それはクリフトに直接的には関係ないし、むしろ幼馴染なのだから祝福すべきなのだと思う。だが、そんな気持ちにはなれなかった。 (私は……いったいのことをどう思っているんでしょうか……?) 自分自身に問いかける、だが、やはり答えは出ない。いつになったら出るのか見当もつかないが、それでもクリフトは自分の胸に問う。 も し もこの日常 が壊れたら 私とあなたは、どうなってしまうのでしょうか? |