「新一」

 君の名前を呼ぶ。ああ、心臓がどきどきするんだ。甘くてちょっぴり酸っぱい(俗にいう甘酸っぱい)、そんな空気がいいよね。



 私の名前を呼ぶ。ああ、やっぱり心臓がどきどきするんだ。甘くてちょっぴり酸っぱい(しつこいようだけど、甘酸っぱい)、そんな空気がいいよね。

「手をつないでもいい?」

 君の温度を知りたくて、私は君の手を盗み取る。私よりも少し冷たい君の温度。ねえ、もしかしたらつながった手から私のどきどきが伝わってしまう? どうかどうか伝わりませんように。と、私は神さまにお願い。

「まだいいなんて言ってないぜ?」

 そういいながらも、楽しそうに笑う新一。

「だめなの?」
「や、別にダメってわけじゃ、ねぇけどよ……」

 テレながらそっぽを向いた。かわいらしい新一の一面。そんな一面も持ってるんだね。私が知ってるのは、君のほんの一部分だけ。でもね、それもいいよね。これから君を知っていける。誰も知らない君を知れるんだよね。それってとても幸せなことで、大事なこと。

「ね、新一」
「んー?」
「これからもずっとこうしていけたらいいね」

 未来は予想できない。不確定で不安定なものだから、君はきっと「そうだな」なんて言いやしないだろう。わかってる、わかってるけど、なんとなく君との永遠を口にしてみたかった。

「そうだな」

 予想外に、君は私の夢見がちな言葉を肯定した。びっくりして新一を見れば、君はイタズラっぽい笑顔を浮かべて「驚いた?」とたずねた。私は素直に頷いた。

「俺は探偵だから、証拠もなくむやみに言うのが嫌いだ。でも、ここがよ」

 つないでいないほうの手の人差し指が新一自身の頭をさした。

「第六感がよ、とならずっと一緒にいられるって。…ああくそ、らしくもねぇこと言ってんな俺」

 やっぱり私は君のことを知らなくて、わかんないことだからけで、でもそれがね、

「いいよね」
「おう」




これくらいが、調度いいよね。

ママママカロニ。