「快斗の弱点知ってるよ。」 の家に遊びにきてそうそう、したり顔で言い放ったに、快斗は、は?と顔を顰めた。唐突すぎて意味が分からなかった。知っているからといってなぜこんなに自慢げに言うのかもよくわからない、弱点なんぞ、もしも知っているのならば隠し持っておくにこしたことはない。いざって時に脅しに使えるだろう。 「で?」 「で? じゃないよ、もっとさ、こう、取り乱したらどう? だって、弱点知られてるんだよ?」 「それが本当に弱点かどうかも分からねえだろ、ブァーカ」 快斗にバカにされて、はカチンときた。例の、人を小ばかにしたようなあの笑顔だ。こいつ、わたしは弱点をしってるっていうのに、よくもこんな態度をとれるな。 「どうなっても知らないからね。ばかいと」 「あ!? 誰がばかいとだって!?」 「おりゃあー! くすぐり攻撃ー!!」 「うお!? や、やめ、うひゃひゃひゃひゃ! やめ、! おい! や、あはははははは!!!!」 ベッドに座り込んでた快斗を押し倒す勢いではやってきて、寧ろその勢いでベッドに倒れこんだ快斗に馬乗りになり体を固定して、快斗の体中をまさぐった。途端、快斗らしからぬ笑い声。そして先ほどの小ばかにしたようなあの笑顔は一変して、一面笑顔、というか、全力で笑っている。やっぱり快斗はくすぐりが苦手らしい。 「どうだ、参ったか?」 「参った! 参ったから!!!」 くすぐる手を止めると、肩で息をしながら、ほっとした様子の快斗。なんというか、いい風景だ。 「……誰から聞いたんだ?」 「おしえなーい」 「おい教えろよ!」 「秘密を守るのは探偵の役目なので」 「おいおい、いつから探偵なんだよ、は」 「ふふ、いつからでしょう?」 「(タレコミはあのガキだろうな……あんにゃろ。次会ったらただじゃおかねーぞ)」 と、快斗がそこまで考えて、ふと冷静にこの状況を分析してみた。ここはの家、親は家にいない、ベッドに横たわっている、そしてその上に座り込む 。これは、つまり、その、 「やばいんじゃねえの」 ぽつりつぶやいた。 「何が?」 「んでもねーよ、脳内お花畑さん」 「はい、罰です」 「ひゃひゃひゃひゃひゃ!!! すみませんさまー!!!! ごめんなさいいいい!!」 再びまさぐられて、快斗はまた全力で笑い、平謝りをする。は満足げに頷いた。 「よろしい。二度と逆らわないこと」 「けっ……」 ――ここらへんで、今がどんな状況なのか、ということを思い知らせてやろう。快斗の頭に、悪い考えが浮かんだ。 「ひゃ!」 の悲鳴。快斗がの背中に腕を回し、ぐっと上体を起こして、すぐさまを隣に寝かしつけて、その上に馬乗りになる。驚きすぎて顔が固まっている。 「誘ってるの? まあ、脳内お花畑さんなんだから、無意識にだろうけど。」 「な、なんのこと?」 「お前、さっきまで俺に馬乗りしてたんだよ? ベッドの上で」 途端の顔が朱に染まる。快斗が言わんとしていることを、理解したようだ。 「一応、俺とは付き合ってるんだぜ」 「いいいいちおう!?」 「そんでもって、健全なオトコノコ、なんだぜ?」 「ふっ、ふ、不健全だよこんなの!」 「健全な男女なら、こういう状況だと、欲情するもんだぜ?」 多少照れを含みながら快斗が言うものだから、の顔のほてりは、ますます上昇する。 「わた、わたしは、欲情なんてしてないよ」 「おめーがしてなくても、俺はするの」 「なんで?」 「なんでって……ん?」 なんだか期待のこもった目で見られている。刹那、ははーん。と快斗は心中で理解する。彼女の考えていることなんて、お見通しだ。 「、まさか、好きだから、とか言ってほしいんじゃねえだろうな?」 「ぎくっ! ま、まさかあ!」 ぎくっ! なんていうか普通、なんて思いながら、快斗はの頬に手を添えた。 「さっすが、脳内お花畑さん」 「なあにそれ、その脳内お花畑って。ねえ、わたしのことバカにした呼び名でしょ」 「ご名答。さすが名探偵?」 「ああ、またバカにした、ばかいと」 「センスのない呼び名だこと」 「ぐぐぐ……」 「なあ、」 バカにされていたのに急に普通に名前を呼ばれたので、の胸がどきんと高鳴った。 「俺もの弱点知ってるんだぜ?」 「弱点……?」 「そっ。俺しか知らない弱点」 ニヤリ、妖艶に笑んだ快斗。この後、先ほどが快斗を攻めた様に、の弱点を快斗は攻めたのだが、確かにそこは快斗しか知らない弱点であった。 君の弱点、知ってるよ。 最後……下ネタかよ! |