今日は波紋の修業はないみたいで、シーザーがわたしの家にやってきた。二人で他愛ない話をしていたのだが、話題も一旦落ち着いたので、急にわたしはしりとりがしたくなった。なんかたまに、単純な遊びをシーザーとしたくなるんだ。しりとりだとか、指相撲だとか。 「シーザー、しりとりしよう」 何気ないわたしの提案にシーザーは快く頷いてくれた。 「いいぜ。んじゃあからどうぞ」 「ここはオーソドックスに、し、り、と、り」 「理由なんてわからないけれど、君が好き」 え? 「……。さ、さる」 「ルートなんて初めからない。キミにたどり着くために必要だったのはただキミを好きだという気持ちだけ」 ちょっと、 「け、け、……けーき」 「キスはとするからこそ意味がある」 これは…… 「る……んー。ルーム」 「夢中なのさ。に会ったその時から」 どういう 「ラブソング」 「愚問だよ。僕の口は君へのラブソングを唄う口」 「ちょっと待ったー!!」 「たくさんの人の中から……「そうじゃなくて!」 尚も平然としりとりを続けようとするシーザーを遮り、強制終了させる。 「さっきからなんなの!? 愛の台詞じみたことばっか言って!」 聞いてるこっちは恥ずかしいったりゃありゃしないよ! わたしの名前とかちょくちょく出てくるしさ。 「だめなのか?」 不思議そうに首を傾げないでください。可愛らしい……。 「だめって言うか、聞いてて恥ずかしいって言うか……」 「それならよかったぜ」 なにがよかったのやら。 「さっ続行しよう」 さわやかな笑顔にプラスしてウインクをして言われたので、わたしは渋々頷いた。所詮わたしは、シーザーに弱いんです。惚れた弱み、ってやつだね。 「うう……何で終わったっけ? 忘れちゃったから、シーザーのザ!」 「残念だね。好きだ、君だけを愛しているよ」 しりとりはまだ終わってないのに、シーザーはわたしの唇をキスで塞いだ。 「ちょ……と?」 「誓いのキスさ」 満足げに言うシーザーの顔が思った以上に素敵な顔で、わたしの心臓が煩いくらい激しく打つ。 「は? 俺を愛してる?」 答えなんて知ってるくせに。あえて言わせようとする、その不敵につりあがった口元。ああ、大好きだ。 「……愛してるよ」 「よくできました」 腰に手を回され、ぐいっと寄せられたと思ったら、シーザーがのぞき込むようにしてわたしに再びキスをした。ちゅ、と可愛らしい音が鳴る。 「結婚しないか?」 頭にシーザーの言葉が反響する。彼は今プロポーズを……した? 「シーザー、もしかして……プロポーズした?」 「そのつもりだけど?」 「でもでも、シーザーは困っている女の子を放っておけないじゃない。その子たちに一生一緒にいてって言われたらどうするの? シーザーはきっと、悩んじゃうよ」 「自分の愛している女の子を幸せにすることが一番に決まってるだろ」 シーザーの顔、すごい穏やかで、まるでわたしの返事を見据えてるみたい。悔しいなあ。 「指輪は?」 「ん?」 「婚約指輪くれなきゃ、様にならないよ」 だからわたしは、仕返しするの。精一杯生意気な口をきいて、シーザーが「マンマミヤー」って言って、参った! って感じに笑うように。 「じゃあ目をつむって」 あら、用意周到だ。わたしは少し驚きがらも素直に目をつむる。わたしの手をシーザーが取り、やがて薬指にやわらかい感触。 「目を開けて」 「……?」 やっぱりというか、薬指に指輪はなかった。わたしが目で疑問を訴えると、シーザーは困ったように笑った。 「まだ指輪買ってないんだ。だから……今はキスの指輪で勘弁してください」 「……しょうがないなぁ。勘弁してあげる」 指輪なんてどうでもいいよ。あなたの婚約者だって証、薬指に宿ったんだもん。 「俺と結婚してくれるか?」 再度尋ねる彼に快く頷いて、彼の左手薬指に誓いの指輪をプレゼントした。 好きだ。 実はこれ、むかし違う相手で書いたものを、シーザーにしたものです。 つまり使い回し。わあ。笑。しかもイタリア人なのに英語って。そこらへんは目をつぶってくださりますと幸いです。 (2013.01.08) |