そういえば、犬夜叉の悩みとか、聞いたことないなあ。
そんなことを眠りに落ちる前にふと思い浮かんだ。彼は自分の悩みをとても嬉しそうに受け取ってくれた。
しかし彼から悩みを聞いたことなんて一度もない。頼りにされてないのか、はたまた悩みなんてないのか、
寧ろ悩みを言うのはプライドが許さないのか。どれもあり得る、とは考えた。
そしてそんなことを考えている間にいつの間にか眠りに落ちていて、起きたら朝になっていた。
のそっと起き上がって辺りをうかがうと、誰も起きていない。そして今日も野宿だったので、身体が痛い。
立ち上がって大きく伸びをする。もう一度辺りをうかがって、犬夜叉に目が留まった。
(犬夜叉が寝てる、なんか可愛いな……。)
木に背を預けて、鉄砕牙を抱え込むように寝ている。しかも口を開けている。
そろっと音をたてないように近づいて、間近で顔をうかがおうとしゃがみ込んだとき、犬夜叉の目がぱっと開く。
「っうお、か……びっくりしたあ……。」
「へへへ、おはよう犬夜叉。」
「あーびっくりした、ちょうどの夢見てたんだ。」
まだ寝ぼけ眼の犬夜叉が目を擦りながら言った。
「へえ、どんな?」
「んーどんなだっけか……覚えてねえや。」
「うんうん。」
「……なんで頭撫でてんだ?」
「ん?いやなんか、かわいくて。」
犬夜叉の頭をニコニコほほ笑みながら撫でまわす。なんだか今は犬夜叉がペットに見えるのだ。
可愛くて愛らしい愛犬、犬夜叉。
「かっかわいい?……そんなこといわれてもぜんっぜんうれしくねーぞ。」
むすっとした顔もまた愛らしい。
「だめ?」
「別に……いいけどよ。」
こうやって照れながらなんだかんだ、いい、という犬夜叉がたまらなくかわいい。
素直というのはどうしてこんなに人を可愛く見せるのだろう。うぬぼれかもしれないが、彼は自分に対して
他の人よりも素直に接してくれている気がする。もう一度いうが、うぬぼれかもしれない。そしてそれが
なんだか嬉しかったりもする。
「と犬夜叉がいちゃいちゃしとる……。」
振り返ると、これまた寝ぼけ眼の七宝が眠たそうな声で言った。
の中の何かが弾けた。
「七宝!!!」
すっと立ち上がり、七宝のもとへ駆けつけて、抱き上げた。
七宝の可愛さと言ったら、群を抜いている。可愛いくせに言葉遣いが古めかしいのもまたいい。
「てめえ……七宝。」
犬夜叉が恨めしそうな目で七宝を睨む。
「可愛いって素敵!いちゃいちゃなんて言葉誰から教わったの!」
「がよくいうておるぞ……。」
「ふああ〜……がうるさくておきちゃったわよ。」
かごめも起きた。こうして一行は次々と起きていった。
その日の午後、は犬夜叉とお話をしながら歩いていた。街道には旅人向けの茶屋が一軒あった。
もう少しいったらきっと村があるのだろう。その茶屋で休憩を挟むことにした。
「わーおいしいね!」
「ほんとね、素朴な甘さ!」
「団子なんて久々に食べたよ。」
女子がきゃぴきゃぴと団子をほおばる。
と、そこに弥勒がかごめと珊瑚の前にすっとやってきた。
「いやあーほんと美味しいですなあ。」
そういいながらかごめの膝をすりすりとさする弥勒。間もなく彼は頬をひっぱたかれた。
この間、癖もじきになおると言っていたのに、なにかの当てつけかのようなこの様子。
むっと来るが、あえて何も触れずに、立ち上がり、向かいの椅子で、お団子を食べ終えて
お茶を飲んでいる犬夜叉の隣に座った。
「お団子美味しいね。」
「おー、たまにはいいな。」
「今日は宿に泊まれそうだし、いい感じだね。お、雲母。」
雲母がぴょんとの膝の上に載ってきた。ああ可愛い。隣には犬夜叉、膝の上には雲母。
なんて幸せなのだろう。
「……うん。やっぱりいいな」
「なにが?」
犬夜叉がをしげしげと見つめ、感嘆したように言う。
「いや、の髪、好きだなって思ってよ」
といっての髪に触れ、優しくといた。
髪を誰かにとかれるというのは気持ちが穏やかになる。
「……ありがとう」
綺麗じゃないよ、という言葉が出かけたのだが、穏やかな心持ちが自然と礼をいった。
「でも、犬夜叉の髪のほうが綺麗だよ。」
「俺?」
心底不思議そうな顔だ。
「触っていい?」
「おー。」
今度はが犬夜叉の綺麗な銀髪に指を入れて、とかすと、やはり指どおりが良くて、何度もとかす。
すると犬夜叉も穏やかな気持ちになったのか、やさしい顔つきになった。気がした。
「うん、綺麗。」
「んー。」
「ねえなんかさ、犬夜叉って、の前だとなんだか隙だらけだよね。」
「?そうかー??」
珊瑚の言葉に犬夜叉がきょとんとした。心当たりはないらしい。
「うん。今なんて、腑抜けそのものだったよ。」
「俺が腑抜けだと!?」
「そう、その普段の怒ったような顔も柔らかいっていうか。」
「そうかなあ。」
も心当たりはなく、首をかしげた。
複雑な心持なのは二人。かごめと弥勒だ。
しかしそれぞれの事情を知らない珊瑚は、そうだよ。とのんきに頷いた。
罪のない無自覚たち
犬夜叉が人気なので、犬夜叉と絡んでみました♪