鉄砕牙にはじかれた飛来骨。
飛来骨が珊瑚の手元に戻る前に犬夜叉が珊瑚に斬りかかろうとするが、彼女は毒粉を投げた。
あわてて犬夜叉は火鼠の衣を鼻にあてがう。
「お前みたいな耳をしているやつは大体匂いに弱いんだ。」
「くっ……!」
さすが妖怪退治屋をしているといったところか。
お陰様で珊瑚に近づくことができない。
「……奈落を退治してくる。」
「弥勒……。」
弥勒がそれだけをいって奈落のもとへと歩いて行った。ついていこうか迷ったが、ついていったところで
何もできない。はただただ弥勒の背中を見守ることしかできなかった。
「みんな頑張れ……。」
小さくつぶやき、ぎゅっと目をつぶる。
絶叫のとき
「!犬夜叉!!」
かごめのもとに、手に刀を持った、切り取られた手首が飛び込んでくる。
そのことに気づいたは真っ先に犬夜叉を呼ぶ。事態に気づいた犬夜叉が飛んできて腕を鉄砕牙で切り付ける。
しかし次なる刺客、珊瑚の飛来骨が再び犬夜叉たちに襲いかかろうとしていた。
犬夜叉はかごめを抱えて飛び退く。次の瞬間には飛来骨が先ほどまで犬夜叉たちがいた場所を抉って空に舞った。
飛び退いているうちに、もはや手だけとなった手が、かごめの首から四魂のかけらをかすめ取った。
「くくく……ここは貴様らがもつようなものではない。」
奈落の切り刻まれた手が、再び奈落のもとに戻り、再び手の形を成していく。
「四魂のかけらさえ手に入れれば長居は無用。さらばだ犬夜叉。」
「逃がすか!!」
犬夜叉が奈落に飛びつこうとするが、奈落は瘴気を放ち、前と同じように瘴気とともにこの場を去った。
すかさず弥勒が奈落を追いかける。
「わたし、追いかける!!!」
しばらくどうしようか迷っていたが、結局いてもたってもいられず、は瘴気を追いかける。
やはり、弥勒だけ行かせてもしなにかあったら心配だ。
するとちいさな妖怪、雲母が大きくなり、乗れと言わんばかりの隣に降り立った。
「ありがとう。」
は雲母にまたがると、ぐんぐんと先へと進んで、空へと飛び立った。
どうやら雲母は空を駆けることもできるらしい。この分だったらすぐに弥勒に、そして奈落に追いつくだろう。
「ぁ、弥勒!!」
「ん?」
みるみるうちに弥勒に追いついて、雲母は器用に弥勒を載せて、再び空を駆ける。
「おお!!それに雲母といったか……乗せてくれるのだな。」
「うん!あ、奈落だよ!!」
すぐに奈落に追いつき、雲母は奈落の隣に躍り出る。弥勒は錫杖で奈落に叩きつける。
彼がバランスを崩さぬように、は弥勒の腰に抱き着き、支える。
「な!」
奈落の体から、薄黒い、まるで内臓のような、筋肉のような、そんな気持ちの悪いぐにょぐにょとした
ものが奈落の下半身からまるで植物の根のように生えていて、それが露呈した。
これには雲母も弥勒ももあっけにとられる。そのぐにょぐにょとした奈落の下半身の先端が、
人の手のような形になり、襲い掛かってきた。
雲母の首を絞め、弥勒は襲いかかる手を錫杖で振り払うが、雲母がもがき、弥勒とは雲母から振り落とされた。
「くくく……甘く見るなよ。」
「大丈夫か!!」
「わたしは平気だよ。」
地面に落ちてぶつけた個所がじんじんとするが、それ以外は至って平気。
弱音なんて、この場で死んだってはかない。
「雲母、大丈夫?」
雲母も立ち上がり、首を縦に振った。
弥勒がと雲母の前に守るように立ちはだかる。
「くくく……法師、何を驚いている。」
「まやかしか!!」
「まやかしかどうか……女を見て思い知るがいい!」
「やめろ!!!」
弥勒の後ろ、のもとに奈落の体が襲い掛かる。も慌てて黎明牙を翳して結界を張るが、
それもほんの一瞬しか効かない。結界に阻まれた奈落の体がはじかれるが、すぐに襲い掛かってくる。
きりがない。弥勒が錫杖で必死に薙ぎ払うが、斬っても斬っても、奈落の体は再び自己修復して元に戻っていく。
がすでに覚醒しかかっているのが、せめての救いか。
「くっ!!」
頭上から襲い掛かってきたのでを抱えて横に飛び退くが、今度は飛び退いた先から襲い掛かってきた。
二重の構えに、弥勒はついに命の危険を感じた。咄嗟に自分の背を奈落の体にさらす。
そのことに気づいたは「やめて!!!」と叫ぶが、時はもう遅い。
「うおりゃ!!!」
犬夜叉の声が聞こえてきた。と同時に、身体の鈍い痛みが入った。地面に落ちたのだろう。
慌てて弥勒から離れて、彼の安否をうかがうと、彼の背中には奈落の体が突き刺さっていた。
「……っ!!!」
ざわっと身体の中を何かが奔った。
「うわあああああああああああ!!!!!!」
「っ!!」
のもとにすかさず奈落の体が襲い掛かるが、が怒りに身を任せて自身の爪で奈落の体を引き裂く。
「奈落!!!!お前を許さない!!!!」
黎明牙を抜いて、地面を飛び立つ。