この退治屋の里は工房の役割も果たしているらしく、退治した妖怪の骨や皮で武器や鎧を作っているらしい。
妖怪の体は人間よりも頑丈にできているため、そういうものを作るのに適しているのだろう。
そして、残った亡骸は村のはずれの鍾乳洞に捨てているらしい。その鍾乳洞の前まで一同はやってきた。
「ここが……。なんか怖い。」
「、怖かったら私の後ろに隠れていなさい。」
にっ、とほほ笑んで、弥勒はを安心させようとするが、はがちがちに固まったままなかなか歩みを進めない。
「怖い……お化けでそう。」
「大丈夫ですよ、、ここで一人で待ってますか?」
「!!!やだ!」
「なら、一緒に行きましょうね。」
弥勒に手を取られて、いやいや歩き出した。すでに犬夜叉は鍾乳洞を黙々と進んでいる。
「ちょ!ちょっとまってよ!」
「早く来いかごめ。」
かごめもまた渋っていたのだが、容赦なく進んでいく犬夜叉に一種のあきらめを感じて、かごめも歩き出した。
鍾乳洞の中は入ってすぐに妖怪の骨で埋め尽くされていて、足場が悪いうえに気味が悪い。
怨念がはびこっていそうで、いやでもマイナスな考えになってしまう。なるたけ何も考えないようにして
奥へ進んでいくのだが、やはり考えてしまうので、なりふり構っていられず、弥勒の腕にしがみついて歩いていく。
「……お前……。」
「怖いんだから、仕方ないじゃん……。」
本気でおびえているが自分を頼りにしてくれている。
それがどんなに嬉しいことか、そして心が弾むことか。
「……。(かわいいな。)」
いつもなら犬夜叉がうるさくいってくるが、前をいく犬夜叉にはこのことには気づいていないので、
弥勒は存分に今の状況を楽しんだ。
やがて一番奥にたどり着き、奥地で広がっている光景に、一同は絶句する。
「なんだ……これ。」
犬夜叉がぽつりとつぶやく。
目の前には、妖怪に食べられてしまったかのようにも見えるし、まるで一体化してしまったかのようにも見える
女性のミイラのようなものがあった。女性のミイラの胸には一つ大きな穴が開いていて、なんとも不気味だった。
は弥勒から離れて、ミイラに見入る。
「教えろ冥加じじい、これはなんだ。」
「見ての通り。」
「見てわかんねえから聞いてるんだろ。」
「………。」
「わからないんじゃな。」
七宝が呆れたように言った。
「妖怪?それとも、人間?」
「妖怪と一体化したようにも見えます。」
の問いに弥勒が静かに答える。こたえはいくらここで悩み、議論しても出てこない。
やはり、里のものに話を聞く必要があるようだ。
「お城に……いこうか。」
がおずおずと提案し、一同は妖怪退治屋の手練れたちが向かったというお城へ向かうことにした。
退治屋の女
「とはいうものの犬夜叉……。少し休みませんか?」
「ん?城に行ってやつらに会おうってんだろ。」
「休憩もはさまねば。こう歩きづめではやかごめさまが疲れてしまいます。」
「弥勒ー!」
さすが!と言わんばかりのきらきらのまなざしで弥勒を見る。
弥勒は女性の気持ちがよくわかる。それに対して犬夜叉は少しそこらへんが抜けている。
「お前ら、辛いのか?」
「そりゃまあ、昨日から全然寝てないし、お腹もすいたし……。」
「なんてワガママな女なんだ。」
「なにをー!?」
犬夜叉とかごめがまた喧嘩を始めた。やれやれ、と弥勒と七宝と一緒に座り込み、
このすきに休息をしておこうと考えた。そのときだった。木々の間をお構いなしに、何かがこちらに向かってくる
音がした。刹那、自分たちの頭上の木々が何かによって真っ二つになった。もともと座り込んでいた三人は唖然とし、
その様子をただただ眺め、立っていた犬夜叉とかごめは間一髪伏せてよけれた。
すぐに状況を確認しようと皆が視線をあたりに回すと、女性が一人いた。彼女はちょうど巨大なブーメラン
のようなものをキャッチしたところだったので、こちらに向かってきた何かはブーメランで、放った犯人は
彼女だということがわかった。つまり―――我々の敵。
「貴様が犬夜叉か!退治する!!」
「さ……珊瑚!」
「え?里の人!?」
かごめがおろおろと狼狽える。
「飛来骨!」
珊瑚と呼ばれた女性が、再びブーメラン改め飛来骨を放った。
「犬夜叉様、珊瑚と争ってはなりませぬ!」
「ンなこと言ってる場合か!」
犬夜叉は鉄砕牙を抜いて飛来骨を薙ぎ払おうとしたが、むしろ鉄砕牙が押されている。
抑えきれず、飛来骨は宙に舞った。
「こりゃ、話を聞くどころじゃねえな……。」
ぽつり、犬夜叉がつぶやく。
「お前!なぜ俺を狙う!!」
「黙れ半妖!」
なぜ犬夜叉は狙われているのだろう。そしてなぜ半妖ということをしっているのだろう。
疑問は増えていくばかりだが、消化できないままの中にとどまる。
「里のみんなの仇!!」
珊瑚は再び飛来骨を放つ。
「どういうこった。説明しろ冥加じじい。」
「わしにも皆目……。」
飛来骨が飛んできたので犬夜叉はさっと避けるが、一秒でも遅れていたら飛来骨に抉られていた。
地面の抉られようが尋常ではない。飛来骨は再び宙に舞い、珊瑚のもとへ戻ろうとするが、それを弥勒が
阻止しようと風穴を開く。
「風穴!」
封印を解いて風穴を解禁するが、途端に奈落の毒虫である最猛勝がぶわっと湧き出た。
これを吸って弥勒は命が危険にさらされたことがあるため、悔しいが弥勒は風穴を閉じた。
「なんでここに……タイミングがよすぎだよ……!」
が歯がゆさを感じこぶしを握る。こんなとき力があったら、あんなブーメラン真っ二つにできるのに。
力がない自分では何もできない、足手まといになってしまう。
珊瑚が飛来骨をキャッチすると、彼女の後ろにすっ、と奈落が現れた。
「くくく、犬夜叉。おとなしく退治屋に成敗されるがよい。」
「てめえ……!」
こちらにもわかるほどの強い殺気を犬夜叉が放つ。
「ここであったが百年目だ!!」
犬夜叉が珊瑚をそっちのけで奈落に斬りかかろうとするが、奈落は珊瑚にぼそぼそと何か告げると、
珊瑚が頷いて邪魔するように飛来骨を放った。しかし犬夜叉はそれをかわして奈落へと進んでいく。
しかし、珊瑚がチェーンクロスのようなものを放ち、犬夜叉の足に絡めると、彼は勢いよく地面に突っ込んだ。
彼女の武器は飛来骨だけではないようだ。
「お前の相手はあたしだ!!」
「てめえ!邪魔しやがると先にぶっ殺すぞ!!」
「やってみろ!!」
邪魔されたことで完全に頭に血が上っている犬夜叉。
「きっとあの子、犬夜叉に里を滅ぼされたと思ってるんだわ。」
「奈落に騙されてるんだ!!」
「ん、、あの子背中に四魂のかけらが……。」
「え?」
背中に、四魂のかけら。
いったいどういうことなのだろう。