妖怪たちを追ってきた先にあったのは、砦のようなものだった。しかし砦はところどころ壊れていて、
最悪の結末が頭をよぎる。壊れた砦から中に入ると、そこには想像をはるかに超えた地獄絵図が広がっていた。
おびただしい数の死体。妖怪も、人間も、とにかくおびただしい量で、臭いもひどかった。吐き気がこみあげてくる。
が、ここでへたっているわけにもいかない。頑張れ自分、とは自分を奮い立たせた。
「妖怪たちが狙ってたのはここだったのね……。」
「ほとんど相討ちじゃねえか。」
「間違いありません、ここが退治屋の里のようですね。」
弥勒の言って言うとおり、きっとここは退治屋の里だろう。妖怪を退治している武器が少し特殊であった。
と、何か生き物の息遣いが聞こえてきて、一同は身構える。するとすぐにその生き物は姿を現した。
「なんだ、妖怪の生き残りか!?」
犬ともキツネともつかぬ、大きな妖怪が妖怪のむくろをくわえてこちらをじっと見ている。
犬夜叉が鉄砕牙を抜く。
「そっ、その声は犬夜叉様!?」
「しゃべった!しかもちょっと声じじくさ!」
声と見た目の不釣りあいさに、思わずは突っ込んでしまった。
「しずまれ雲母、このものたちは敵ではない。」
その言葉の後に、大きな妖怪はみるみるうちに小さくなっていき、足で体をかいた。
小さくなった姿は本当に愛らしくて、は駆け寄りたい衝動に駆られたくらいだった。
「犬夜叉様!おなつかしゅうございます!!」
犬夜叉は一瞬の沈黙ののち、遠慮なく自分の鼻を叩いた。
「冥加じじい、なんでこんなとこに。」
「お知り合いでしょうか。」
「さあ。」
は首をかしげた。
どうやら先ほどの声は冥加じじいのほうだったらしい。
惨劇の場所
どうやら冥加じじいというのは、犬夜叉の家来らしかった。ノミの妖怪らしい。
そしてかわいい妖怪、雲母は猫又の妖怪らしい。
雲母はに興味を持ったようで、てこてこと寄ってきて身体を摺り寄せてきた。
も一応化け猫の妖怪に変身するので、きっと同じ猫の妖怪ということが本能でわかったのだろう。
冥加じじいもまた、の生まれ変わりだということにたいして「やはり!」と肯定を示した。
「どうりで面影が……!会いたかったぞ!!」
「いえいえ、でわたしではないんで。」
その冥加の話によると、ここはやはり妖怪退治屋の隠れ里で、
この里のものは先祖代々妖怪退治を家業としていたらしい。
妖怪からしたらここは宿敵に住む里で、襲われてもおかしくはないらしい。
「しかしよりによって今襲われるとは……いま、里の手練れたちは里に呼ばれて、里の守りが薄かったのじゃ。」
何やら嫌な予感がする……。偶然とは思えぬこの出来事。城に向かったものたちも心配だった。
ともあれ、ひとまず亡くなってしまった人たちの供養をしよう、ということになり、かごめとと七宝は花を摘みに、
弥勒と犬夜叉は死者を埋葬していった。
死者を埋葬し、その上に花と、そのものが持っていた武器をそっと置いて、両手を合わせて目をつぶる。
「ご冥福を……。」
祈らずにはいられなかった。
「しかし残念ですな。いろいろとお話を伺いたかったのですが。」
「おい冥加じじい、四魂の玉について、少しは知ってるんだろ?」
犬夜叉の肩に乗っている冥加が腕を組む。
「もしかして、ここで調べていたの?」
かごめが尋ねると、うむ。と頷いた。
「以前から気になっていた。四魂の玉とはなんなのか……。何しろ玉にかかわったものはみな不幸な目にあっているし、
わしは犬夜叉様が心配で心配で……。」
「なんでい。俺のそばにいると危ない目にばっか合うから、逃げたんだとばかり思ってたぜ。」
「あ、あんまりじゃ!せっかくめぐりあえたというのに!!」
「悪かった。で、なんで戻ってこなかったんだ?」
「……。」
沈黙。
「探そうとか思わなかったの?」
「面倒くさくなったのじゃろう。」
「……図星なのか。」
かごめ、七宝、ともに冥加がどのようなものであるか心得ているらしく、しらーっとした目で見ていた。