薄らと太陽の光が戻ってきたころ、たちの身体が元のサイズに戻った。
おそらく、術者であった桃果人が死んだため術が解けたのだろう。かごめの制服を探し出し、
七宝が例の球体になり地上へとゆっくりゆっくり下りていく。
犬夜叉の生存を各々が祈りながら、相変わらず霧がはびこっている地上に降り立った。
皮肉にも人面果の成っている木のもとで桃果人は冷たくなっていた。しかし犬夜叉の姿はなかった。

「なんで犬夜叉がいないの……?」

はあたりを必死になって探すが、すぐそこは川で、道も狭いためあっという間に探せる場所はなくなってしまった。
そのどこにも犬夜叉はいなかった。

「まさか桃果人の下敷きになっているんじゃなかろうな!?」
「!?み、弥勒!」
「ええ、救わねば!」

弥勒が錫杖を桃果人の下に入れ込み、なんとか桃果人を退かそうとするが見た目からわかるように
とてつもなく彼は重いため、浮きはするのだがその場から退かすことはかなわなかった。
七宝とも押してなんとか加勢するのだが、彼はびくともしなかった。
三人が手を休めると、七宝が勢いよく涙を流した。

「きっと死んでしまったんじゃ!!うわあああん!!」

おお泣きしている七宝に感化されて、の涙腺もすぐにゆるまり、
七宝ほどとは言わないがおお泣きを始めた。

「いぬやしゃああ!!!なんで死んじゃったのおおお!!」
「泣くな。皆で供養してあげよう。」

の頭を持って自らの胸へと押し付けた。
優しい闇に包み込まれてますます悲しみが心から溢れでて、弥勒の袈裟にしがみ付いて遠慮なく泣いた。

「犬夜叉は……本望だったのでしょう。命をなげうってでもかごめさまを救いたかったでしょうから。」
「ほらおえ!いどい投げ込んでたもん!」
「……すみません、投げ込んでたもんしか聞き取れませんでした。」

びーびー泣いている七宝ととは違い、かごめは涙を流さなかった。
むしろ少し怒ったように顔をしかめて桃果人の亡骸を見つめていた。

「そんなことされても……ちっとも嬉しくない。」

はかごめの発言を聞き少し落ち着きを取り戻したので弥勒から離れて、かごめを見つめた。

「妖力もないくせにあんな無茶して……バカよ犬夜叉は!」
「確かにバカでした……」
「大バカ者じゃ!」
「バカやろー!」

かごめに引き続いてそれぞれが言った時だった。

「てめえら言わせておけば……」

はじかれたように振りかえれば、銀の髪の半妖がそこにはいた。
血だらけではあるが足は確かにあるから幽霊ではない。つまり、

「生きてる!!犬夜叉!!」

感極まり犬夜叉に抱きついた。
制服が汚れるなんて頭になくて、ただただ犬夜叉の生きているという喜びに突き動かされて、
存在を確かめるように、ぎゅっと。再び涙が崩壊したダムのように流れ出た。

「生きておったのか犬夜叉!」
「悪かったなー。」
「何をひねくれているのです。」
「俺が簡単にくたばるわけねえだろ。くだらねえ心配しやがって。」

それまで俯いていたかごめは、その言葉にくるりと振りかえる。
彼女はポロポロと大粒の涙を流していた。

「くだらないって何よ!心配するのあたりまえじゃない!」

まさか怒鳴られると思わなかった犬夜叉は予想外の出来事に言葉を失った。
にじり寄ってくるかごめから逃れようと本能が後ずさりしようとするのだが、がひっついているため動けない。

「あんたが無理してるの知ってたんだから!」

喜ばれ、嬉しがられるならまだしも怒られるなんて犬夜叉としては心外だった。

「助かったんだからいいじゃねえか、泣くな!!」
「泣いてないわよ!!あんたが生きてて嬉しいのよ!!」

怒ってたんじゃねえのかよ、と犬夜叉は心底不思議に思った。
同時に女性というのはよくわからない、と強く感じた。

「ほんとうによがっだああ!!」

それに対して自分にしがみつきわんわんと泣くの頭を見て、こんな女もいるのだな、と小さく微笑んだ。





待ちわびた夜明け