「お前が自分で選んだんだ、人の首で作った薬を飲むくらいなら、死んだほうがましだって。」
「けっ、誰が死ぬって言った。俺はなぁ、そんなもん飲まなくったって……」

犬夜叉が爪を立てる。

「てめえなんかに負けねえ!!」

再び桃果人に突っ込むが、彼は再び杖を振って再びとげとげの堅い根が出てきて犬夜叉に襲いかかるが、
彼はそれを腕で防ぎ、なんとか桃果人の懐まで飛び入り、根を操る杖を奪おうとする。
しかし相手は妖怪で、犬夜叉は人間。力の差は歴然で、杖は奪えず、根が犬夜叉を締め上げる。

「どうしようこのままじゃ……!」

弥勒の風穴も小さな屑ゴミしか吸えないし、は小さくし、妖力が不安定なため戦えない。
なんとか犬夜叉に加勢できるような何かを部屋中に目を滑らせて探すがなにもない。
と思いきや、部屋の奥、掛け軸の隣に弓が見えた。

「かごめ!!弓がある!!」

が指さすと、かごめは根を器用に避けながら弓を求めて走る。
何もできないもどかしさというのは、なんともいやだった。犬夜叉が傷ついている、かごめが戦おうとしている。
自分は?

「桃果人!!」

かごめが弓を引いて桃果人に照準を合わせている。
が、弓は無残にも折れてしまった。

「わりぃな。弓の手入れなんて全然してないんでな。」

そういって桃果人は声を出して笑った。
その笑い声がやけに耳触りで、彼の声を打ち消すようには声を張り上げた。

「桃果人!!お前なんていまにわたしがぎったぎたにしてやる!!わたしが相手だよ!!!」

手を口元に添えて小さな体で精いっぱい桃果人に喧嘩を吹っ掛けると、彼の注意はにそそがれた。

「ん……なんだ、まだ若い女がいる。まってろ、この半妖をなぶり殺した後ゆっくり喰ってやるからな。」
「てめえ……いい気になってるんじゃねえ!!!」

根に巻きつかれ瀕死状態の犬夜叉が、根に生えているとげを抜き取って桃果人の目に突き刺した。

「ぐわあ!!てめえ!!!」

怒り狂った桃果人が思い切り腕を振り下ろし、彼の眼にとげを突き刺したその腕を根に押し付けた。
ボキッと音がしたため、おそらく折れているだろう。

「桃果人!!!待ってよ、犬夜叉を殺さないで……」
「ぼろぼろにしてやる」

の声は桃果人に届いていない。
彼は犬夜叉の胸倉を掴んで今にも殺してしまいそうなとき、一条の光が桃果人の背中に突き刺さり、
ぽろっと彼のお腹から四魂のかけらがでてきた。
光の正体は、かごめの放った矢だった。先ほどの折れた弓ではなくて、木でできた弓で放ったらしいが、
その弓は徐々に形を崩していき、やがてすべて消えた。

「女あ!!」

桃果人は犬夜叉を放り投げ、かごめに向かっていこうとする。
かごめは逃げようとしたがあいにく窓際で、逃げられそうにない。
は声も出ず、身体も動かず、ただ唖然とその様子を見ていた。

「伏せろかごめ!!」

犬夜叉が最後の力を振り絞って桃果人にタックルをした。
二人は窓から飛び出て、そのまま落下していった。
彼らの姿はすぐに闇に溶けた。




半妖ということ