「朔の日ならなおさら放っておけないんじゃない……?もしなにかあったら…。」
「そうね……けど。どうやっていけばいいのかしら。」
「おらに任せろ!」
でん、と七宝が胸を張り自信満々の微笑みを浮かべた。
「おらが連れてってやる!」
「……どうやって?」
の問いに、ぼわん、と音を立てて七宝が変化して、なんだかよくわからない人を小馬鹿にしているような、
でもどこか愛らしいピンク色の球体になった。
「おらに乗るのじゃ!」
「だ、大丈夫なの?」
「かごめ、心配要らぬ。こう見えておらはたくましいからのう。さ、さ!」
七宝の言葉を信じるより他はない。たちは七宝に乗り込んだ。
感触を確かめてみると、ふかふかしていると思いきやしっかりしていた。
「……ちぃと重いな。」
ぽつり呟いたのを皆は聞き逃さなかったが、出発じゃー!とそれを打ち消すような大きな声で叫び出発したので、
誰も何も言わなかった。
ひっはっひっは、と苦しそうな声を出しながら空を昇っていくと、すぐに下が霧で見えなくなった。
「た、高いなぁ……どれくらい高いのかなぁ……。」
高いところがあまり得意でないが、昇りはじめて結構経った頃に心配そうに言った。
「ねえ、ねえ、大丈夫だよね?」
上へ行けば行くほど心が追い込まれていく心地がして、誰か助けて、
と心の中で何度も何度も繰り返しながらかごめに縋りつく。
「七宝ちゃんを信じましょ。」
肝が据わっているかごめはきっぱりと言い放った。
どこから沸いてきているのかわからないその自信をはとても不思議に思ったし、尊敬もした。
「大丈夫ですよ。私の胸においで。」
と、弥勒が陽気に微笑みながら両手を開いたときだった。
「すまん。」
と、七宝が再びぽつりと呟いた。
その一言に、たちは皆震撼した。次の瞬間、ぼわん、と音を立てて七宝が変化をといた。
と同時にを襲う落下感。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!
「すまーーーーん!!!」
今度は大声で謝罪を述べる七宝。
弥勒はとかごめを先ほどの両手を開いたままの状態から抱きかかえ、
出っ張っていた崖に生えていた茂みに飛びついた。そのまま木に引っかかると思いきや、
そのまま下へと落下して尻餅をついた。何が起こったかよくわからなかったが、
とりあえずお尻を打っただけで助かったようだった。
「た……すかったぁ。」
安心感から、の目尻に涙がじわりと浮かんだ。
「、耳がとんがってますよ。」
弥勒に言われて耳を触ってみると確かに耳がとがっていた。
命の危険からちょっぴり覚醒したらしい。
「ねえここ……桃果人の住処かしら。」
かごめの声に目を前方に向けると、無機質な部屋の中に箱庭のようなものが場違いに置いてある。
とりあえず箱庭に近寄ってみる。
「なにかしらこれ…ひ、と?」
かごめの言葉には箱庭を食い入るように見つめると、確かに人がいて、しかも動いていた。
「木の陰にうじゃうじゃおるぞ。」
「もしやこれは…桃果人に捕えられた人たち…!?」
急にぐっと箱庭に吸い込まれるような感覚に陥る。箱庭が段々と大きくなっていく。
「な、なあにこれ?」
「しまった箱庭を見つめてはいけな……」
弥勒の言葉の欠片では理解した。そして理解したときにはすでに箱庭の中に入り込んでいた。
箱庭の中は妙な空気が漂う不思議な世界であった。
どんよりと、静寂が支配するなかきょろきょろ、忙しなく辺りを見渡すが、この妙な空気と静けさ以外は
至って普通の小さな村のようだった。
「あ、れ……四魂のかけらがない…!」
「え…」
「どうしよう!ここに落ちたときまではちゃんとしてたのに…!」
「それなら、もしかしたら箱庭に入り込んだときに外に落としちゃったのかもよ。」
「それならいいんだけど……。」
それでもやはり不安なのだろう。かごめは心ここにあらずな様子で頷いた。
いざ行かん空の上