「なにい〜!?また国にかえるだぁ?てめえまだそんなこというか!」
「だって大切な模試なんだもん!」
犬夜叉とかごめが今日も言い争いをしている。
現在お昼休憩中で、弥勒と七宝が川で魚を捕らえようとしていて、がその様子を眺めているのだが、
どうしても二人の会話が聞こえてくる。大変気まずい状況だ。
大抵こういうときはどちらかから同意を求められるから困るのだ。
「、模試は大切よね?!」
今回はかごめからだった。
「あ、うん…」
「が帰れないってのにおまえはのうのうとあっちにいって"てすと"すんのか!?」
「うっ、そんなこといわれたって……!」
かごめが言葉につまった。
犬夜叉も口が巧くなったな、と密かに感心する。
「わたしのことは気にしないで。帰れないことはしょうがないから。」
かごめの擁護をするわけではないが(あくまで中立。)、犬夜叉の言い分に異議を申し立てる。
は学校のことなんてとっくに諦めがついていた。
すると今度は犬夜叉が言葉につまったのだった。
「かごめさまもなにやら大変そうですなぁ。」
「ずっとこっちにいたほうが楽じゃろうに。」
弥勒と七宝が苦笑いする。
「じゃあ聞くが、おまえはそんなに"てすと"が好きなのか?!」
つまった犬夜叉は大抵の学生がノーと答えるであろう問いを怒り任せに投げ掛ける。
「好きなわけないでしょ!」
かごめも当然のように切り返した。
「大変だねぇ。…って、あれなにかな?」
かごめの境遇を他人事のようにつぶやくと、川上から何かが流れてくるのが見えてきた。
「首…?」
立ち上がりそれを見つけたかごめがぽつりとつぶやいた。
そう、流れてきたのか人の首だった。"まげ"が結われてない辺り、戦に負けた人か何かだろうか。
「川上で戦でもあったのでしょうか。ご供養を…!?」
首を取り上げた弥勒が何かに気付いたらしく目を見開いた。
「どしたの?」
おそるおそるが尋ねると、首から目をそらさずに
「本当に人間の首でしょうか?」
といい、首の斬られた部分を見せた。
グロテスクな映像を勝手に想像して反射的に縮こまったのだが、首の切断部分はなかった。
まるで首だけで生まれて、川を流れてきたような感じだった。弥勒は川から上がり、流れてきた首を地面においた。
「作り物かな?」
「いや、そうとは思えません。」
の推測はすぐに否定され、少ししゅんとなる。
「間違いねぇこの首。人間の匂いだ。」
犬夜叉の言葉に一同は皆黙り込んだ。
皆この首の謎を自分なりに考えているんだろうということが表情から伺えるが、は正直気味が悪かった。
斬首されたにしては表情が穏やかだし、血色も悪くない。ああ、気味が悪い。
「よし!調べに行きましょう。」
ぱん、と手を打ちかごめが沈黙を破った。ああ、言うと思った。と内心は苦笑いした。
かごめは勇敢で好奇心が強い。はそんなかごめに一種の憧れを抱いている。
わからないことをそのままにしない、という姿勢は素晴らしいことだ。
「ん。帰るんじゃなかったのか?」
「どうせ気になって勉強どころじゃないもん。」
既に立ち上がりリュックを背負っている。
「そうですな。かごめさまがいるうちに行ったほうが。」
弥勒も七宝も立ち上がる。
「やっぱり妖怪の仕業かしら。」
「ええ、四魂のかけらを使っているかもしれません。」
すたすたとさっさと行ってしまう三人。
完全に取り残されてると犬夜叉は顔を見合わせ、やれやれ、といった表情で笑い合った。
「わたしたちもいこっか。」
「おう。なんか癪だからだらだら行ってやるか。」
立ち上がり、のんびりとした足取りで並んで歩いていくと、先を行く二人に叱咤された。
「ぐずぐずしないで。急ぐんだから。」
「さっさと片付けましょう。、早く私の隣へいらっしゃい。」
こうして長い夜へ誘われていくのだった。
長い夜への誘い