「見て、わたしのおっきいでしょ?」
「あ、ほんと。でもあたしのも負けてないわよ。」
「う、いい勝負。」

女湯から聞こえてくる会話に、男湯は水をうったように静かになった。

大きいって、何が。
負けてないって、何が。

「悔しい!ちょっと触らせてよー」

触らせてって、何が。

「やーだ!しぼんだらどうすんのよ!」

しぼむって、何が。

弥勒と犬夜叉は完全に動きを止め、息すら音を立てないよう細心の注意を払う。

「おらはかごめのほうがおっきいと思う。」
「え!?うそ、わたしのも負けないくらい大きいよ!」
「やったー!七宝ちゃんナイスジャッジ!」

これは完全にあれだ。
あれ以外ない、あれに決まっている。
弥勒と犬夜叉はふと視線はかち合った。

「ち、ちげぇ!べつに、聞いてな、むごご」
「お黙りなさい」

犬夜叉は弁解しようとしたが、弥勒が瞬時に口を押さえる。
犬夜叉の取り繕いよりもいまは女湯の会話が聞きたかった。

「絶対わたしのほうが大きいと思うんだけどな。誰かー」
「誰もいないわよ。」

ここに私が。
その判定してさしあげましょう。と、心の中で挙手する。

「もー!」
「ちょ、こら!触らないでよ!!…あーあ。」

おお、やっている。私も混ぜてくれ。

「大体、タオルを膨らませるのどっちが大きいか競うなんて、おこちゃまだよ。かごめはもういい年なんだからね?」
「なんか諭すように言ってるけど言いだしたのだからね。もう、負けたからって。」

…………?
たおる、とはまさかよくが手を拭く際に使っているふわふわのものだろうか……。
それを、膨らませていたのだろうか。
―――どうやら勘違いオチという名のお約束らしい。
弥勒はため息を吐くと顔を湯で洗った。



「ところで。」
「なあに七宝?」
「弥勒のことどう思っておるのじゃ?」

弥勒は髪をかきあげたところで再びフリーズした。
犬夜叉も夜空を見上げたところで止まる。

「な、なな、なにをいいますか!」
「あ、あたしも聞きたかった。」
「どうって、変態でスケベなエセ法師としか。」

変態、スケベ、エセ法師。
の自分に対する不名誉な評価に涙が出そうになる。

「犬夜叉はいいね。強いし、優しいし、可愛いし。よかったね、かごめ」
「な、なにがよかったのよ。あたしには関係ないわ!」
「ふ〜ん?」

犬夜叉はふっ、と鼻で笑った。
弥勒は面白くなくてお湯を思い切り犬夜叉にかけた。

「っおい!鼻に入った!」
「入ればいいと願ったからな。」




おとなりの勘違い