「へ?」
「だからあ、今日いいかけてたことってなによ?」

ずっと気になっていた。
"犬夜叉のこと"といってそのまま沈黙を守ったままだった。
は濡れた髪をすべて後ろへもっていった。

「なんかいったっけ?」
「言ったわよ!ほら、その、わたし犬夜叉のこと、とか言って…」
「ん、ああ、あのことね」

湯に浸かりすっかりふぬけた顔だ。あれ、と疑問に思う。
もし自分が想像したとおりの言葉だったとしたら、こんなぽやぽやした顔で言わないだろう。
寧ろドキッとし、のことだからわたわたするだろう。

「大したことないよ」
「大したことじゃないの…?」
「うん。に、犬夜叉をヨロシクーって言われたよ、って伝えただけ。」
「……それだけ?」
「なーに?犬夜叉にも、それだけって聞かれたけど、なにを期待してたの?」

心につかえていたモヤモヤが昇華していった。
よかった、どうやらと犬夜叉は大丈夫ならしい。


かごめは、犬夜叉のことが好きだった。
そうはっきり自覚したのは、殺生丸との戦いのあと、傷ついた犬夜叉に強制的に現代に帰らされたとき。
前から好きかもしれないと思うことは度々あった。そのたび気のせいだと言い聞かせていたが、もう誤魔化せない。

会いたくて仕方なかった。
最後に抱き締められたときの感触が忘れられなかった。

でも犬夜叉は……

「いい湯だな〜」

目をつぶり気持ちよさそうに呟くを見る。

――のことが、好きなのかな。それとも桔梗?

とにもかくにも、どちらかに心があるのは確かだった。
もしもも犬夜叉のことを好きだったら、と恋人になってしまうかもしれない。
そう考え二人を見ていると、本当に辛かった。

「ねえ、はさ」
「はーい?」
「犬夜叉のこと…好きなの?」

思い切って聞いてみる。の気持ちを知りたい。好きじゃない、と言ってほしかった。

「そりゃあ、好きに決まってるよ。」
「え?…男として?」
「まあ、仲間としてね。」
「恋愛では?」
「好きじゃないよ〜」

へらりと笑う

「ほんとに?」
「うん。」

(………心配して損した)


肩の荷が降りた気がした。まだ、自分にもチャンスがあるはず。
犬夜叉に、そばにいてほしいと言われた自分だ。

「よーし!」
「おお?なんか気合いはいった?」
「うん!あたし、負けないわ!」
「負けるなかごめ!」
「うん!!!」


かごめの決意