供養し終えた一同は、新たなかけらを探しに歩き出した。
「それにしても」
「なあに?」
弥勒が話を切り出した。
「先ほど変化していましたが…どういうことなのですか?」
あっ
と思い出したように、かごめ、犬夜叉が声を揃えた。
何しろいろいろあったので、すっかり忘れていた。
「そうよ!あれなんなの?」
はあのときを思い出すように「んー」と唸る。
「よくわからないけど…あのとき確かに"死ぬ!"て感じたの。そしたらなんかね、ああなってた。」
「生きたいっていう気持ちが、を妖怪にしたのかもな。」
「楓ばあちゃんにきいてみない?」
かごめの提案に犬夜叉が賛同し、一度引き返すことになった。
(わたしは…妖怪なのかな?)
複雑な思いを胸に、弥勒の漕ぐ自転車の荷台で運ばれる。
「すごいですなぁ。」
「そうだねぇ。」
「が何者であろうと、私は変わりませんからね。」
「うん。」
「…信じてないですね?」
「おい弥勒、になんかしたらブッコロだからな!」
犬夜叉が近づいてきて、弥勒を睨む。かごめが犬夜叉の頭をぺちんと叩いた。
「物騒なこといわない!」
まったく賑やかな人たちだなあ、と小さく笑った。
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「が変化じゃと?」
「うん。死ぬ!死にたくない!って思ったらいつの間にか妖怪に。」
「どのような容貌だった?」
「爪が犬夜叉みたいに延びてて、三本の赤い線がひげみたいに生えてて、目が黄色で、耳がとんがってた。」
まるで猫を連想する感じだった。
「…以外ありえねぇよ。」
犬夜叉が断言した。
「ってあの、人間を護っていたといわれている…」
「そうそう。この村で四魂の玉を護ってたんだって。」
「たしかに、さまもそのような容貌じゃったな。」
「じゃあやっぱりわたし、生まれ変わり…?」
「そうじゃろうな。この地にはまださまの力が残っておる。それもあって、生きたいという気持ちが
反応して妖怪として覚醒したのかも知れぬな。」
自分のなかでも漸く認め始めた。
手を見つめてみる。爪はいつもどおりだった。"わたし"だった。
嬉しくもなく、悲しくもなく、つらくもなく、ただ「そうなんだ。」と思っただけだった。
フィクションのようなことが多い最近だかし、自分が妖怪の生まれ変わりだと言われ続けていたから、
自分が妖怪に変化する力を持っているといわれたところで驚きは少なかった。
これがきっと、現代である日突然、だったらきっと驚き困惑しただろう。
「これからも妖怪になることあるのかな?」
「その可能性もある。再び危険が迫ったら変化するだろう。」
「半妖みたいなもの?」
「そうだな。」
「そう簡単には死ななそうだね」
「だな。」
犬夜叉を見るかぎり、半妖の身体の作りはとても丈夫だし、死後50年経った今でもその力が各地に
偏在する妖怪に変化するとなれば、相当だろう。
「頼もしいですな。」
弥勒が軽やかに笑った。
「いざとなったら守ってね。」
かごめはウインクをした。
「…うん!」
は大きく頷いた。
「よ、生前さまが使っておられた刀が近くのほこらにある。
何かの役にたつやもしれぬから持っていくとよい。」
「ありがとう。あの刀ね。」
「じゃ、じゃあ俺が案内するからこい!」
犬夜叉がやけにワクワクしながら申し出た。
「あ、でもわたし場所知ってるから大丈…「おらいくぞ!!!」
腕を捉まれ否応なしにつれていかれる。
「大胆ですな」
「弥勒さまのせいよ」
「私の?」
「弥勒さまがと仲が良いから、を取られまいと必死なの。」
「それなら負けてられませんな。」
――これから大変そうだわ。
かごめは苦笑いした。
「なあ。」
「ん?」
「が人間だろうが妖怪だろうが、はだからな。」
犬夜叉の言葉が熱く胸に入り込んだ。気味悪がらず認めてくれている。それが嬉しかった。
自分が妖怪になってしまうことよりも、それによって周りが引いてしまうことが何より怖かったのだが、
かごめも弥勒も犬夜叉も受け入れてくれている。
「……うん!」
素晴らしい仲間をもったな、としみじみ感じた。
ほこらにはこのまえきたときと同じく、黎明牙がおいてあった。
「、黎明牙お借りします。」
そういって黎明牙を手にした。
このまえは不思議な映像が傾れ込んできてわからなかったが、今手にとってみると随分としっくりと
くることに気付いた。重くも軽くもない、丁度いい重さだった。
刀を抜いてみると、刃こぼれ一つしていない綺麗な刀だった。
「鉄砕牙より全然綺麗だな…」
少し不服そうな犬夜叉の物言いには「いいでしょ」と悪戯に笑った。
(黎明牙…うまく扱えるかわからないけど、よろしくお願いします。、見守ってください。)
なぞの行方