(いやだ、死にたくない……!) そのとき何かがのなかで弾けて目覚めた。 ビシャ! と音を立て、二人に迫っていた鬼は切り裂かれて死んだ。墨が鬼からあふれた。切り裂いたのは――。 「え……」 自分の手を見ては驚いた。爪が犬夜叉のように尖っている。 「!」 弥勒が駆け付けた。犬夜叉は数限りなく迫りくる鬼を退治しなければならないので迂濶に動けない。 「……! 顔が!」 弥勒が酷く驚いている。制服のポケットから手鏡を取り出して確認すると、は絶句した。頬に猫の髭を連想するような三本の赤い筋があり、耳は尖り、瞳孔は細く瞳の色は黄色だった。まるで、猫。 「……これは」 つぶやいた途端もと姿に戻り始めた。 「!」 犬夜叉が遅れてこちらに向かって来た。だが犬夜叉を追って妖怪がついてくる。 「邪魔だ!」 となぎ払ったのは良いが、墨が大量にふき出た。 「う……」 犬夜叉が着地と同時に臭いにやられ気を失った。 「犬夜叉!」 かごめとが駆け付ける。気を失った犬夜叉目掛けて妖怪が急降下してくる。 「危ない!」 弥勒が庇うように前に出て、風穴を開いた。瞬く間に妖怪を吸い込んでいく。意識を取り戻した犬夜叉は弥勒に助けられたということに苦い顔をした。 「私の後ろから離れないで下さい!」 それにしてもすごい量の妖怪だ。いくら吸っても出てくる妖怪に焦りを感じる。しばらくするとようやく妖怪を全てを吸い終えた。弥勒は数珠で風穴を封じ倒れ込んだ。 「弥勒!!」 「これほどの邪気を一度に吸い込んだのは初めてだ……いささか疲れました」 「お疲れさま。ありがとう」 弥勒はに微笑んだが、疲れがにじんでいる。胸が痛んだ。だが無情にも新しくあふれ出てくる妖気に一同は屋敷へ目を向けた。 「次は何……」 かごめの声色に疲れや恐怖が滲む。犬夜叉は迂濶に妖怪を倒せないし、弥勒の風穴は暫く使えない。かごめは弓矢を持っていないし、は先程の不思議な現象の正体もわからないので、戦力にはならない。とうとう屋根を破って妖怪がでてきた。縦に長い三つ頭のある蛇だ。真ん中の頭に昼間見た絵師が乗っかっていた。 犬夜叉が駆け出し絵師を追いかける。すかさずかごめが「大丈夫なの!?」と声をかけるが、犬夜叉は「四魂のかけらはどこだ!?」と怒鳴る。 「腰の竹筒!」 かごめが言うがいなやすぐさま妖怪に飛び付いて、こちらを振り向いた。 「やい弥勒! お前一人で恰好つけんな! 馬鹿野郎!」 、かごめ、弥勒の間に沈黙が訪れた。こほん、と一つ咳払いして、かごめが通訳する。 「ごめんなさい通訳します。ありがとう。あとは俺に任せろって、」 「そうは聞こえませんでしたが……」 新しく出てきた妖怪にどう対処するかと思いきや、犬夜叉は殴るという手に出た。 「おお、あれはどういう技ですか?」 「ただ殴ってるんだろうね。」 弥勒を支えながら見守る。とうとう絵師を追い詰めた犬夜叉。 「どうしたもう品切れか? ……観念しな。」 もうこちらの勝利は確実だった。 目覚めのとき |