「怪しい絵師ですと?」 かごめが弥勒に先ほど会った絵師について説明した。犬夜叉は離れたところに座り、拗ねている。かごめが弥勒を頼ったのがいやなのだろう。そしてその隣に。 「ー犬夜叉ー。話合いに参加せんのか?」 「けっ」 「もう、弥勒様のことちょっとくらい頼ったっていいでしょ?」 「やなこった」 は参加してもよいのだが、なんとなく自分まで参加してしまっては犬夜叉の機嫌が限りなく悪くなってしまいそうなので一応犬夜叉の隣に居る。 「そうなのですかかごめ様。そんなに必死に私のことを探して……」 かごめの手を握り、見つめる。 「いえ、偶然通りかったら四魂のかけらの気配がしたから……二つ……いえ三つはお持ちね。」 「いい目をお持ちで」 「なっ!?」 犬夜叉が四魂のかけらという言葉に反応し、つかつかと歩み寄ってきた。暴力は厭わない感じだ。 「おすわりっ!」 「ぶぎゃあ!」 犬夜叉がたたきつけられた。何度見ても痛そうだ。 「かごめてめえ! なんで黙ってた!」 「これは私が集めたものです。それを盗るのは盗っ人ですよ?」 「おめーがいうな!」 やはり暴力で解決しようとしていたらしい。そのとき、襖の外でこそこそとしていたおじさん(たぶん家主であろう。)が言いずらそうに「あのう…」と声を出した。 「法師様……姫を守ってくれるという話は?」 「あ、ご安心下さい。救います救います」 ほんとうに法師さまなの…?ここにいた弥勒以外のすべての人が思った。 +++ どうやらその姫というのは、毎夜使いの妖怪がやってきて、見知らぬ屋敷につれてかれるという。倒すべき親玉はその屋敷にいるため、今夜もその屋敷にいってもらうしかないらしい。 「必ずお助け申す」 「頑張ってね姫」 「絶対、助けます!」 姫さま憂いを秘めた顔で力なく笑った。 +++ 「犬夜叉、おまえも私の仕事を手伝ってくれるのですか?」 「そんなんじゃねーよ」 「うう緊張してきた……」 「あんたが緊張してどうするのよ」 と、そのときだった。月を背に牛車のようなものが降りてきた。まるでかぐや姫のような光景だったが、牛車のそばにいるのが禍々しくてとてもじゃないがかぐや姫とは思えなかった。 「姫……ささ、今宵も」 妖怪が姫を牛車にいれ、戻っていく。 「かごめさま! 車拝借します!」 「あ、わたしもいく……!」 弥勒がかごめの自転車に跨った次の瞬間にはも荷台に乗り込む。めざすは牛車の向かう親玉のところ。 「お、おい!」 「あたしたちもいくわよ!」 かごめが犬夜叉の背に乗り込み、弥勒たちを追いかけた。 「おいかごめ……」 「ん?」 「なんであんな仲いいんでい」 「はあ……あんたほんとにが好きなのね」 「ちげーよ!」 犬夜叉は本当にわかりやすい。かごめは犬夜叉の素直なところが好きだった。(素直なのは口じゃなく行動と顔だが) 「嘘つかなくても良いのよ。応援するし!」 「よけーなお世話だっつの!」 「ふりおとされぬよう掴まっていてくださいね!」 「うん! 手、回して大丈夫?」 「を今までで一番近くに感じます」 「しょ、しょうがないじゃん」 「嬉しいことです」 とくん、と胸が高鳴るのを感じた。こんなに男の人に密着するのは初めてだった。浮気者のくせに、と思いつつやはり嬉しかった。 +++ 「これは……妖気?」 今まで感じたことのない感覚に"妖気"と言う単語が咄嗟に出て着たのは、やはりの生まれ変わりだからか。牛車がたどり着いた先の家の周りは、空気が淀んで見えた。 「来るぞ!」 犬夜叉の声に反応するように家から無数の鬼が出て来た。だが少しリアル感がない。これは―― 「絵?」 「ああ。やつは自分が描いた絵を操る術を持ってるんだ!」 「もしかして大量の人を殺して、わたしたちに鬼をけしかけてきたやつ……?」 「ああ!」 犬夜叉の追っていた墨を使う絵師と、弥勒の引き受けた姫を脅かす存在の退治という仕事が合致したようだ。 「弥勒! 恐かったら下がっててもいいんだぜ!」 「なんの!」 犬夜叉と弥勒が妖怪に立ち向かう。とかごめは少し離れた場所で待機するが、そんな二人に目をつけた鬼が一匹こちらに向かって来た。身体が騒つく。本能か危険を察している。 (死ぬ……!) そう感じた。かごめが頭をおさえ、ぎゅっと目をつぶった。 姫さまお助け大作戦! |