「これが臭いのもとか」
「お使いの手紙が!」
「おすわり!」

 かごめの言魂に犬夜叉がおもいっきり地面に叩きつけられた。

「すみません」

 犬夜叉の代わりにが謝り、見送った。

「なんでそんなに焦ってんのよ?」
「弥勒の野郎に四魂のかけらとられてたまるかよ!」

(これはかごめにも弥勒にも言えることだけど……基本負けず嫌いだよね)

 ひそかにほくそ笑んだ。 は気付いてないようだが、も立派な負けず嫌いなのだった。

「なーに笑ってんだよ。お前は弥勒に取られてもいいのかよ?」
「いえ、そんなことありません」
「大体人間性がダメなんだよな」
「あら、あたしはだーいすきだけど?」
「「え?」」

 かごめの冗談交じりの一言に、犬夜叉とは真剣に受け止めた。

「やだ冗談よ!」
「あれ、さっきお尻なでられてなかった……?」
「ああいうのがいいのか……」
「人の話を聞きなさいよ!」

+++

「おう、面貸せや」

 とうとう犬夜叉が臭いの正体を見つけたらしい。猫背気味の男の首根っこを持ってジロリ見つめている。かごめの隣でことを眺めていたは、犬夜叉の物言いに(不良だ……)とひそかに思った。

「な、なんじゃきさまは……わ、わしはただの絵師……」

 そのわりにずいぶんと薄汚いし、痣が色んなところにある。

「おめえ、人の血の臭いと肝の臭いがプンプンするぜ」
「! はっ、はなせ!!」

 絵師が明らかに動揺しながら犬夜叉の手を振り払った。

「逃がしゃしねえ!」

 逃げようとする絵師を捕まえようと追い掛けるが、突然絵師が振返り、着物をガバッと開きはだけた。すると、そこから鬼が現れた。

「あ、ちょっとまって!」

 呼び止めるのも聞かず、自称絵師は近くに停めてあった船に飛乗り逃げていった。

「どういうこと?」

 なぜ懐から鬼が突然?と、逃げ行く背中を見つめていると、犬夜叉はあっという間に妖怪を薙ぎ倒していた。すると―――

「で!?」

 黒い血が溢れ出し、その血は犬夜叉に一身に降りかかった。次の瞬間には血の匂いがこちらにまでやってきた。血とも墨ともつかぬ変な匂い。

「何これ…くさーい……」
「これは…血と…墨と…肝……」

ばちゃん。
 黒い血に勢いよく浸かった音がした。

「いっ犬夜叉!?」
「鼻が利き過ぎて臭気にやられたんじゃ!」

 犬夜叉が目を回して倒れていた。慌てて駆け寄り、かごめと共に液体から引きずり出した。

「川があるんだから、これに沿って行けば村があるよね」
「とりあえず近くの村にいきましょ?」

 犬夜叉を荷台に乗せ、かごめたちは川に沿って下り始めた。川の下流にはやはり村があった。もう辺りも暗くなってきたのでとりあえず宿を探そうと、きょろきょろしつつ村を歩く。

「ん……」
「気付いた?」

 どうやら犬夜叉が意識を取り戻したようで、眼を擦った。そして荷台からおり、「どこでいここ?」とに尋ねた。

「川沿いを下ってきたの。それで犬夜叉墨まみれだから宿探してるの」
「別に墨まみれでもいいじゃねえかよ、それより四魂のかけらを探そうぜ」
「犬夜叉がよくてもあたしたちがいやなの。……あれ、ねえこのお屋敷ちょっといってみましょう」
「? おー」

 犬夜叉は灯りが漏れている中庭のほうへいってしまった。「普通玄関からでしょ!」といいつつかごめも続き、と七宝が続いた。

「おや!! それにかごめ様。」

 堂々進入した結果、中にはなんと弥勒が若い女の手を握っていた。どうやら彼は浮気性らしい。

「お邪魔?」
「ととととんでもない!!!」

 慌てて手を離し、必死に弁解しようとするが、の怖いくらいの笑顔に硬直した。



予期せぬ再会