弥勒が大通りに立つと、かごめたちを降ろした犬夜叉が鉄砕牙で弥勒に切り付ける。だが弥勒はそれを錫杖で受け流した。これには皆が目を見張る。

(強い……)

「てめえいったいなにものだ?」
「私の名は弥勒。法力にて人助けをしております」
「人助けの法師だぁ!? と四魂のかけらを攫っておいて、返しやがれ!」
「悪いことは言わぬ。四魂の玉をこのまま私にお渡しなさい犬夜叉」
「てめえ、俺を知ってたのか?」
「いえ皆目。がそういっていたので」

くるっと振り返り、ね? とに笑いかけた。も戸惑いつつもなんとなく笑顔を浮かべた。
 そのなんともいえない親密な雰囲気にカチンときた犬夜叉は鉄砕牙を握り直し、再び弥勒に襲い掛かる。

「気安く名前を呼んでるんじゃねぇ!!」
「なかなか力がお強い!」

 しかしその斬り掛かりも受け直していく。が、弥勒は不覚にも積み上げられていた木の棒に躓きよろけてしまった。その瞬間を見逃さなかった犬夜叉はすかさず弥勒の錫杖を弾いた。それは宙を舞い、無情にも地面に突き刺さった。

「くっ……」
「さあ、さっさととかけらをを返しな!」

 鉄砕牙の切っ先を向けられた弥勒はしばらくだまり、やがて何を思い立ったか犬夜叉に背を向けて走り出した。

「諦めな、弥勒!」

 そう叫び鉄砕牙を構えたとき、弥勒が声高に叫んだ。

遠くへ逃げてください! 命に関わります!」

 何かすごい技を出すのだろうか。は言われたとおり遠く、というかかごめのところへ行った。

「おかえり!」
「ただいま……」

 かごめの顔を見てほっとした。なんだか何日もかごめの顔を見ていない気がした。

「皆の衆、死にたくないものは下がりなさい!」

 取り巻きは一目散に物陰やら建物に隠れていった。それを見て、弥勒は不敵に笑んで数珠を解き放った。

「悪いが私は負けず嫌いなんです!」

 突然凄い風が弥勒の回りの景色を次々に変えていく。屋根を剥がし、馬が宙を舞い、そして吸い込まれていく。彼の右手に。犬夜叉も吸い込まれそうになるが鉄砕牙を地面に突き刺すことによってこらえた。だが弥勒の右手は確実に犬夜叉を寄せている。たちのところにも風の魔の手は迫っていた。ささえになっている柱がぎしぎし悲鳴を上げているのだ。

「おらたちも逃げるのじゃ!」

 七宝が身の危険を感じいうが、かごめは取り合わない。かごめは弥勒は本当は悪い人じゃないと感じ始めていた。それはも同じだった。弥勒は関係ない人を巻き込まないようにしている。
 そのときかごめが風の流れに沿ってジャンプした。は突然のかごめの奇行を止めようと思わず一歩踏み出したが、それが命取り。踏み出した足は止まることを知らず、また次の一歩を踏み出した。恐るべき風の力。

「いいい犬夜叉ー!! 助けてー!!」

 涙を浮かべながら、もはや駆け足状態のに犬夜叉はわけがわからないといった表情で
!?」と名を叫んだ。飛んできたかごめに気付いた弥勒は数珠にて右手を封じる。かごめはそのままの勢いで弥勒に飛び込んだ。弥勒はかごめを抱きとめ、共に吹き飛ばされる。
 ちょうどそのころ犬夜叉は鉄砕牙を片手にを抱き留めたところだった。村は水を打ったように静まり返った。

「ったくなんで走って来るんだよ!!」
「こ、怖かったよぉ……」
「まあ……無事で良かったが」
「あ、かごめは無事?」

 かごめのもとへ走る。幸いなことにかごめは無事で、どうやら弥勒は気絶しているみたいだ。

「いたたた……」
「大丈夫?」
「かごめお前、自分からつっこんでったのか?」
「だって……この人この右手を使えばもっと早く私たちを殺せたはずよ。悪い人じゃないわ。」

 とはいうものの

「「無鉄砲なやつ」」
「うるさーいっ!」

 威勢よくさけんだそのとき、ひっと顔を強張らせる。見れば気絶しているはずの弥勒の右手がかごめの尻を摩っていた。犬夜叉が慌ててかごめを引き寄せたと同時にむくりと弥勒が上体を起こした。

「殺して…」
「この生臭坊主…!」
「……」

  に至っては絶句している。

「落ち着け、話せばわかる」

 そしてたちは弥勒の話をきくことになった。



弥勒VS犬夜叉