唇の端から漏れる浅くて熱い呼吸音と、布が擦れる音、それから水分を含んだリップ音が部屋の中に響いている。
 ハンジの左手はの腰に回されて、右手は後頭部はガッチリと固定し、何度も何度も角度を変えて貪るようなキスをされる。その熱に浮かされながらも、頭の片隅にかろうじで残っている冷静な自分が、ハンジさん興奮しているな、と俯瞰している。かくいうとてそのハンジの興奮にあてられて身体がどんどんと熱くなっているのは確かだ。大好きな恋人が興奮している姿を見せられれば、それは当然というものだ。
 息継ぎのために唇が離された隙に、はぐいっとハンジの胸板を押してハンジを見上げる。

「ハンジさん、まだ、お風呂入ってな――――」
「それはそれで興奮するからいいの」

 変態、という言葉は、再び落とされたハンジからのキスに飲み込まれていく。まるで捕食されているかのようなキスがやむと、ひょいと抱えられて、そのままベッドに降ろされ、肩を押されて横たえられる。両脇に手をついたハンジの表情は情欲に浮かされた雄の顔をしていて、それだけでの下腹部は甘く疼く。
 死線をくぐった後というのは、種の本能として、子孫を残そうとするので行為に及びやすいとハンジが言っていたのを思い出す。壁外調査を終え、死と隣り合わせの緊張状態から開放された今の状況はまさしくそうだろう。
 縺れるように部屋の中に転がり込み、じれったい気持ちを持て余しながらも馴れた手つきで装備を解いて、お互いを求めあうように唇を重ねている。もしかしたら他の部屋でも同様に行為が行われているかもしれない。
 それに加えて今回は興奮を助長する要素もある。新兵が巨人になった、それはハンジの興奮が振り切れるにはこれ以上にないものだろう。
 ハンジはの片頬に手を添えると、それをねっとりとした手付きで滑らせて、そして首、鎖骨、と舐めるように下げていく。の背中をゾクゾクと何かが駆け抜けていき、抜けるように声が漏れ出た。

「あっ……」
「ああ、可愛い。可愛い。こんなエッロい顔して、エッロい声だして、イケナイ子だなぁ」
「だっ……て」

 ハンジはそのまま性急な動作でのシャツのボタンを外していき、下着を上へずりあげると、膨らみを揉みしだきながら上では口内を犯していく。歯列をなぞられ、舌を絡め取られて、唾液を絡めて混じり合う。ドロドロと溶けていく思考はもはや形を成すことなく、ただただ与えられる快感に溺れていった。
 そうして顔が離れて一度見つめ合えば、優しい触れるだけのキスが落とされた。ハンジさんは乳房をいじる手を止めてメガネを取ると、サイドテーブルに置いた。今度はのズボンのボタンを外して下着ごと脱がせる。上半身は着衣が乱されてずり上げた下着の下から乳房が丸出し、下半身は丸裸で、まさに犯されていると言った様相に、ハンジは自分でやったことにもかかわらず酷く興奮を覚える。

「あはは……ったら、イヤラシイ。ああ、堪んない」

 興奮に浮かされたままハンジは膨らみに顔を埋めて、そこでぴんと主張をしている頂きを口内に含んで溶かすように、味わうように舌を這わせていく。急に与えられた刺激に、反射的に喘ぎ声が漏れ出てしまう。

「うっ、は、あ……ハン、ジさっ……!」

 手の甲を口に持っていきなんとか声を抑えようとするが、何度も身体を重ねたハンジはをどのように攻めたらいいかなんて手に取るように分かるので、堪えようがなく、はしたない声が漏れ出てしまう。ハンジはその手すら自身の手で絡め取ってベッドに押し付けると顔を上げた。

「声、もっと出していいんだよ? 私に聞かせて」
「でも、あっ」

 言い訳は聞かないよ、と言わんばかり、再びすでに唾液ででろでろに溶かされた乳首を吸い上げる。ハンジはそのまま貪りながら、くぐもった声で独り言のように言葉を紡いでく。

「はあ、ねえ、私、興奮が止まらないんだ。また一つ、人類の秘密が詳らかにされるかもしれないんだ、すごいことだと思わない? そこに立ち会えるんだよ、ああ、堪らないよ……!」

 そして手がのお腹を滑り、太ももを滑り、そして熱く熟れた割れ目へとやってきた。まだ触っていないのに既に水分が溢れ出ていて、ハンジが指を這わせただけでまとわりつき、その指は愛液でまみれた。これにはハンジも喉奥で息を飲んだ。

「すっごい濡れてる……あぁ、感じてるんだね? これなら今すぐに挿れられそうだ」

 そう言うとくぷりと音を立てて人差し指を挿れてかき混ぜ、その分泌量を確かめると、次は中指も足して2本の指を抜き挿しする。それだけでの腟内がきゅっと締め付けて、感じているのが分かる。

「うっ、は……んっ……くっ!」

 自分の施した愛撫でが感じているのが堪らなく愛おしくて、どんどんと己自身に熱が集まって硬くなっていくのを感じる。出し入れするたびにの中から愛液が溢れ出て、シーツにたらりと流れていく。濡れた指をそのまま上へ持っていき、熱く固くなっている突起にこすりつければ、ひときわ甲高い矯正が上がり、脊髄反射のように背中が弓なりにしなった。

「ねえ挿れていい? いいでしょ?」

 許可を求めながらも、返事を待たずにハンジは自身のズボンと下着を下ろす。と同時に現れたのは、固く勃ち上がり、先にはぬらぬらと粘着質な液体が溢れ出た性器だ。はそれを眺め、ごくりと生唾を飲んだ。何度もそれをその身で受け止めてきたが、何度見たって息を飲む。今からあの雄を自身の体に埋められて一つになる、そう考えればまだ挿れられてもいないのに、膣がひくひくとする。まるで早くそうしてほしいと言わんばかりだ。
 快感に頭の回転が鈍くなったの視線を受けながら、ハンジはその肉棒を割れ目へと擦り、わざと上へと逃してクリトリスを刺激する。その度にピクリと反応を示す。薄らと目を開けてハンジを見る目は、明らかにその先を求めていた。焦らしたい気持ちもあるが、そんな余裕はあいにくハンジもない。今すぐ貫いて、何度も何度も最奥へと到達したい。

「あぁ……欲しいんだね、いいよ、挿れてあげる。全部受け止めてね」
「はあ……っ! っく……あっ」

 ぬぷ、と水音を立ててハンジの性器がの中にゆっくりと侵入する。膣壁がハンジのそれにきゅうきゅうと吸い付くように包んでいく。の身体に強い刺激が走って、目眩のように視界がチカチカとする。すべてを受け入れると、ハンジはふうー、と長く息を吐いた。瞳を開ければ、快感に眉根を寄せたハンジの姿。

「やっべぇ……きっつ、今日はあんまり持たないかも」

 ゆっくりと抜き、そしてまた子宮口まで挿し込む。焦れったい快感にの口からは本人の意志とは関係なく喘ぎ声が漏れ出る。もう何も考えられず、ただただ与えられる刺激に身を任せて、快感に浸り切っていた。
 すると、迸るような強い刺激が訪れて、思わず目をつぶる。後から、ハンジの指が膣の上の突起を刺激したのだと理解した。ゆっくりとした律動に、擦り上げる刺激。急速に上り詰める感覚がやってきて、は爪先がピンとなる。

「ハンジさ……ちゃう……イっちゃ、あっ!!!」
「くっ、あ、……! 達しちゃったの?」

 そして弾けた。膣が収縮して中に入ったハンジのそれを何度も何度も締め上げる。これにはハンジも射精感を覚えて、思わず抜き取る。あのまま挿れ続けていたら間違いなく吐精していただろう。天に向かって反り立っている愛液まみれの性器はピクピクと小刻みに動いている。早く出したいと言っているようだった。
 は肩で息をして、口の端からは涎が垂れている。なんと情欲的な姿なのだろう、とハンジは見惚れる。気がつけば再びの中へと己を埋めていた。達したばかりのは甲高い嬌声を上げて再び与えられた刺激に酔いしれる。今度はゆっくりなんて無理だった。己の欲を満たすために、何度も何度も腰を動かして打ち付ける。弾けるような水音が室内に響き渡る。

「はっ、あ……ンジさん! も、無理……、んんっ! ハンジさん!」

 何度も何度も名前を紡ぐ唇に己の唇を押し付けて、舌を絡め、ぱちゅぱちゅと熱い竿を出し入れする。キスをやめて顔を覗けば、は薄らと瞳を開けて、そして眉根を寄せる。

「また、くる……!」

 押し寄せてくる強い快楽の波にのまれそうになる。は無意識にその手をハンジの背中に回して、ぎゅっと縋りよる。ハンジも迫りくる射精感をそのままに、何度も何度も打ち付けて、そして……

「くっ……!」

 呻くような声とともに、ハンジは白濁をの中に放って、満たしていく。の膣は、ハンジの性器が何度かに渡って精液が吐精したのを感じながら、それを一滴残らず吸い取るかのようにきゅうきゅうと締め付けた。意識が白んでいき、どちらともなく長く息を吐いた。
 やがてハンジが性器を抜き取れば、収まりきらなかった白濁液がたらりと溢れ出て、シーツへとシミを作った。それはとても官能的であった。
 一滴も残らず彼女と同化してしまえばいいのに、そんな思いに突き動かされて、つうっと溢れ出た精液を掬うと、それをの膣内に入れ込んだ。

「あっ、ん……ハンジさん?」

 驚いたようにハンジを見るの表情はひどく扇状的で、射精と共に収縮していった性欲が、再びすごい勢いでもたげてくるのを感じた。

「えっ、なんかまたおっきく……?」

 少しずつ微睡んでいく意識の中、がハンジを見て驚きをにじませる。

「ごめん、まだ収まらないみたいだ」
「えっ……!?」
がいけないんだよ、だから責任取ってよね」

 身体はとっくに疲れているはずなのに。明日からまた休みなく始まっていくというのに。それでも嬉々としたハンジの表情を見れば、は微睡みから息を吹き返し、その身体を捧げてしまうのだ。