明日は二人とも非番の日。こんな嬉しい日ってなかなかない。特にハンジさんは忙しい人だから、休みは貴重な上、その貴重な休みですら返上して大好きな研究に明け暮れてしまうような人だ。 でも二人のお休みが合った日は基本的にわたしに時間をくれる。だから今夜は二人で思う存分夜更かしできるし、昼過ぎまでぐだぐだ寝ていられる。 「ハンジさん、明日は何しましょうね」 久々にお風呂に入ってくれたハンジさんを椅子に座らせて、その後ろに立って髪をタオルでごしごしと乾かす。 「あ、私本屋に行きたいなぁ。あと製図用のインクも欲しい」 「わかりました! 行きましょう」 「あ〜人に髪をいじられるのってなんか気持ちいいよね」 リラックスしてくれているみたいだった。多忙極めるハンジさんを少しでも癒せたのならとっても嬉しい。ある程度髪の毛も乾いてきたので、よし、と呟くと、ハンジさんに後ろから抱き付く。 「終わりましたよ」 「ありがとう。もっとやっててほしかった気もするなあ」 「ふふ」 ちゅ、っとハンジさんの頬にキスをすると、ハンジさんは「こっちにきて」と囁く。言われた通りハンジさんの前に行くと、眼鏡をかけず髪を下ろしたハンジさんが立ち上がり、両手を広げる。 「おいで」 吸い寄せられるようにその腕に包み込まれた。そしてハンジさんによいしょ、と持ち上げられて、そのままベッドへ運ばれて、どさっと座らされた。肩を押されてベッドに倒れこむと、ハンジさんはわたしに馬乗りになった。目の前の景色はハンジさんでいっぱいになってドキドキと心臓が締め付けられた。 「寝間着姿のの姿は最ッ高に滾るね……」 「お風呂上りのハンジさんも最高に素敵です」 わたしに覆いかぶさるハンジさんの表情がとても妖艶だった。 「ねえ、。もう私の語彙力では語り尽くせないほど可愛いって思ってるんだけど、なんて言えばに伝わるのかなぁ? が言われたい言葉をもっと言いたいし、気持ちいいと思うところをもっと教えてほしいんだ。そしてもっと私のことを好きになってほしいし、私以外を好きになるなんて許さないよ。の頭の中全部私で埋め尽くされちゃえばいいのに。ねえ、私のこと好き?」 ハンジさんはそう言い切ると、ちゅっちゅ、と首にキスを落としていく。身体の芯がぞわぞわとして、吐息が抜けるようにわたしから漏れていく。 「す……き、んっ」 これだけは伝えたくてなんとか声を絞り出す。 「よく聞こえないよ、」 「ハンジさん……っ!」 耳元で囁かれてもういよいよおかしくなりそうだった。ドキドキと心臓が爆発しそうなくらい早鐘を打っている。ハンジさんと身体を、重ねるのかな……! ぎゅっと目をつぶる。 「ふふ、じょーだん」 ハンジさんはあっさりわたしから立ち退いて、すぐ横に寝転がった。なんだか拍子抜けだ。ちらと横のハンジさんを見れば、高い鼻と通った鼻筋がよく見えた。やがてハンジさんは目元を自分の腕で覆い隠し、あー。と声を漏らす。 「が可愛すぎてどうにかなっちゃいそうだ。大事にしたいのに、大切にしたいのになぁ」 ぼやくようにハンジさんが言う。 「私はね、何かに興味を持つことは沢山あるけれど、何かを愛して、大切にしたいと思ったことは初めてなんだ。だから時々どうすればいいのかわからない。大切にする方法はこれで合ってるのか不安なんだ。のことは何でも知りたいからね、知りたいなら調べればいい。そうは言ってもいくら調べても答えが分からないのが人の心だからね」 わたしはこんなにハンジさんに思われていたんだ、と思うと、なんだか泣けてきた。じん、と目の奥が熱くなって、気づいたらぽろぽろと涙が溢れた。横を向いて隣のハンジさんに寄り添う。 「大好きです、ハンジさん。十分すぎるほど大切にされています」 「今だって本当は、を抱きたくて抱きたくて仕方ないんだ。でも君も働きづめで疲れているだろうしと考えると、自制しないとね。のいいところをすべて調べ上げて、もう私なしでは生きていけないようにしたいんだ。この間は耳を舐めたらとてもよさそうだったよね今日は―――」 言いながらハンジさんも身体を横にして、わたしの腰に手を這わすと、わたしの顔を見てぎょっとした。 「!? なんで泣いてるの!?」 「幸せ過ぎて……でも後半の言葉聞いてたら恥ずかしくて涙引っ込みました」 今日は、と言う言葉の先が気になります。何をしようとしているのでしょうか。さすがですハンジさん。 「確かに疲れていますが、ハンジさんと致したいです。致しましょう」 「ほんと!? そしたらさぁ、試作の段階だけど、感度が上がる薬をつくってみたんだぁ……使ってみていい? いいでしょう??」 「く、薬はちょっと……」 すごい残念そうな顔してる。 「ハンジさんのテクニックだけで十分過ぎるくらいなので、これ以上はちょっと、その」 「わかったよぉ。でも――――」 再び馬乗りになるハンジさん。 「明日は休みだから、ちょっと激しくしてもいいよね?」 この質問に答える間もなく服の中に手がもぞりと侵入してきた。ハンジさんの手の感触に、とろとろと思考が溶けていくのを感じた。このままわたしたちは、宵に溶けゆくだろう。 |