「君はバカなのか?」

ディオが眉根を寄せて、その端正な顔をゆがめた。そんな顔をしなくても……。
ちょっと、わからないことを聞いただけなのに。

「バカかもしれない。」

わたしも同じく、眉根を寄せて、顔をゆがめてみた。
それを受けて、彼の顔がますますゆがんだ。

「くだらん、課題くらい自分でやれ。」
「でもね!わからないんだもん!!」

ぐっと、こぶしを握って力説する。
大学の自習室で、一緒に課題をこなしているのだけど、一緒にやっていたのは最初だけで、
ディオはさっさと終わらせて読書にいそしんでいて、今はわたしだけが課題をやっている。

「それに、法律はディオ、得意でしょう?」
「だが、君の課題を手伝ってやる義理はないね。」

しれっと言い放ったディオ。

「か、彼女が困ってるのに!」
「あのなあ、彼女だとかそういうのは関係ないんだ。図に乗るんじゃあない。自主性ってものが君にはないのか?」
「……だって、ディオにお勉強教えてもらうの、好きなんだもの。すっごくかっこいいんだもん。」

テキストに視線を落として、真面目な顔をしてわたしに法律について説く、その姿が好き。
こんなことを言ってはディオに怒られるかと思うけど、残念ながら何を言っているかはよくわからない。
ディオを見るので精一杯だし、法律って難しいし。

「……君って奴は。」

面食らったような顔をしたディオだけど、段々とその表情を柔らかくしていく。
ディオって、好きだよ。とか言ったりしないけど、でも、好きって言われるのは好きみたい。
それでそれで、その、好きって言ったあとに、こうやって嬉しそう?な顔をするディオの顔を見るのもわたしは好きで。

「そうやっていえば課題を手伝ってもらえると思ってるな?」
「そんなことないもん。」
「まあいい。……どこがわからないんだ、見せてみろよ。」

ほら、眉根を寄せて、ため息交じりにそんなことを言うその姿。
なんだかんだ言って結局手伝ってくれるそういうところが好きです。




またひとつ惚れ直した

短め。ディオ短編は、人間味のあるディオさまがテーマ。
title from 恋したくなるお題(2013.02.09)