ディオって本当にクール。
誰彼かまわず綺麗な笑顔を振りまいて、この学校でディオのことを悪く思ってる人なんて、きっと誰もいないと思う。
―――のだけど。

わたしにだけは、笑ってくれません……。

「ディオ、わたしのケーキ食べる? 美味しいよ。」
「いらん。俺のがある。」
「だよね。」

ひょい、とディオの前に一口分のケーキをやったのだけど、そういわれたのでおとなしくそれをわたしの
口に持っていき、食べる。うん、美味しい。こういうのももう慣れた。
相変わらずディオはクールで、カッコよくて、本当に大好き。でも、ディオはどう思ってるんだろう。

恋人同士って、例えば美味しいケーキが二つあって、どっちにしようかな、なんて悩んでて、
そしたら彼が、じゃあ俺がこっちを頼むから、半分こしよう。っていってくれて、幸せは二倍。
そういうものじゃあないのかな。


『す、すす好きです!』
『ほう?』
『付き合ってください……っ!』
『……まあ、いいだろう。せいぜい楽しませてくれよ。』

あれ、ディオってこんなキャラだったっけ?
告白をした当時、わたしはそんなことを思った。
彼はわたしのことを上から下まで舐めるように見わたして、ニヤリ、笑顔というよりか、口元を釣り上げた。
わたしの知ってるディオは、紳士で、誰にも親切で、笑顔がきれいで……。

ま、いっか。

ちょっぴり単純なわたしは、ディオのキャラがちょっと変わったくらいではそんなに衝撃を受けなかった。
で、わたしたち、晴れて恋人同士になったんだけど、付き合ってからがらっと態度が変わってしまったの!
付き合う前は、皆と同じ、あの綺麗な笑顔で接してくれて、とっても紳士だったのに、急に、冷たいの!当然のように、人前でいちゃいちゃとか、お似合いねあの二人!なんてキャンパスで周りに言われるような行為は、一切、ないのです。むしろその逆!!!ディオが出るっていうんで見に行った、ラグビーの試合も、観客席にいたわたしはすーーぐに見つかって

『なんでお前がいるんだ。』

なんて冷たーい顔で、冷たーいことを言われるし。
学校で駆け寄って、えーい!抱き着いちゃえ!なんて思ってたら、わたしの邪念を感じ取ったのか、
頭をまるでバスケットボールみたいに掴まれて、がしっと固定されて、

『必要以上に近づくんじゃあない。パーソナルスペースというものを知らないのか?』

なんて、やっぱり冷たーい顔で言うのだ。

『おいおい、あんまりディオのことを困らせるなよー?』

なんて、クラスメートたちにも言われます。
ちぇ、付き合ってるのになあ。なんでこんなに、ディオは冷たいのだろう。わたしのことが嫌いなら、
別れてくれ、といえばいいのに。
そう、前に心配になったわたしが、

『ディオはわたしのこと、好きじゃないの?』

なんて聞けば、

『まず好きなんて一言も言ったことがないだろ、阿呆め。』

ふっ、とあの、笑顔ではない、口元を釣り上げただけの例の表情をして言う。
こんなにずたずたにされて、傷つかないのかと聞かれたら、もちろんNO!とっても辛い。
けど、わたし、ディオのことが好きなの。嫌いになれたらどれほどいいんだろう。


とんでもなく冷たくて、邪険な扱いをされるんだけど、どこどこ行きたいなあ、なんて言えば連れてってくれるし、
わからないところがあれば、丁寧に教えてくれる。現にこうやって、最近できたカフェに一緒に来てくれている。
何を考えているのか正直わからない。

今、四人席で向かい合って座りあっているのだけど、ここでわたしがディオの隣に座ったら、
どんな反応をするんだろう。好奇心に突き動かされて、わたしは彼の隣に移動する。
離れろ阿呆、と言われるかと思ったのだけど、何にも言わないディオ。
ちらっと覗き込めば、彼はいつも通りの、無表情だった。……意外だ。
あ、目があった。

「え、えへ。」

誤魔化すように笑う。
今度こそ何か罵倒されるかな、と思ったけど、ふん、と鼻を鳴らしただけだった。

「ディオは……さ、どうして、わたしと付き合っているの?」
「はァ?」
「好きでもないのに、わたしと付き合ってくれて、その、無駄じゃない?」
「……お前な。」

呆れたような顔をしたディオ。

「俺は無駄なことが嫌いだ。」
「うん。そうだね。」
「本物の阿呆だな、こうまでいってなぜわからん?」

????
なぜわからん……って。なんでだろう。

「まあ、そうだな、お前は筋金入りの阿呆だ。だから、わからないのも無理はない。
 仕方ないから、このディオが説明してやろう。ありがたく思えよ。」
「あ、はい。」
「無駄を好まぬ俺が、無駄なことをすると思うか?」
「思わない。」
「つまり、そういうことだろう。」
「…………はっ!?」

ディオの言葉を何度も頭の中で咀嚼して、わかった、やっとわかってきた。
つまり、ディオは、遠回しにわたしと付き合っているのを、無駄じゃないって言っている。
やだ、ディオ、好き……!大好き!!

「てことは、ディオ、わたしのこと、ちゃんと好き……!?」
「大体、好きでもやつと付き合ったりしない。」

あくまで、好きって言わないあたりもディオらしいね。

「っっっ!ディオ、好き!大好き!!」
「ふっ……。」

だめ、やっぱり嫌いになんてなれないよ。
だってディオってば、とっても綺麗に笑うんだもん。ずるいよ、こんなときにそんな風に笑うなんて。





やっと笑ってくれた

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ちょいとツンデレ気味のディオさま。と、とりあえずディオが大好きなヒロイン。
title from 恋したくなるお題(2013.02.01)
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