拝啓
春爛爛漫の季節を迎えました。いかがお過ごしでしょう。わたしは、なにも変わりなく過ごしております。
それにしても桜がきれいですね。部屋の窓から見える満開の桜が見えるたびに心が躍ります。
そこでなのですが……。もしよろしければ、お花見、いきませんか?あなたとみる桜はきっと今まで見た
中でも一番きれいに見えるのだと思います。
お返事待ってます。
敬具
日向
ネットで時候の挨拶なんかを調べてみて、書きなれない手紙をしたため、その便せんを封筒に入れずに
おりおりする。完成したのは懐かしの紙飛行機。最近じゃめっきり折ることもなかったので、きちんと完成できたことに
とりあえず感動をする。身体はやはり覚えていた。問題はこの紙飛行機がきちんと彼のもとへ届くか、という点だ。
こんな回りくどいやり方するなら直接言えばいいじゃん、なんて野暮なことは思わないでほしい。
乙女というのは、そういうものなのだ。
対象は東谷家のお庭。熱心に庭いじりしている。そばに花の種の袋があるから、たぶんお花を植えているのだと思う。
―――そういうところ、好きなんだよ。
ぽわん、と身体があったかくなってくる。まさか人外を好きになるとは思わなかったけれど。
さて、と。
照準を合わせて、二回ほど手の動きを予行練習をして、しゅっと紙飛行機を空へと旅立たせる。
が、しかし。うまくドロロのもとへいくわけもなく、紙飛行機はすぐに真横へと飛んでいき、日向家の庭に落ちて行った。
あれ、あれ、庭って……まさかあれがいるんじゃないの。赤ダルマことギ―――――
「ッ……」
ギロロが顔を真っ赤にして(触ったらやけど必至なくらいの赤さ。)わたしの手紙を持って震えている。
これ、夏美との妄想をしているときの顔……
「……お前俺のことを……」
ちら、と東谷家の庭を見ると、ドロロが不穏な顔で日向家と東谷家との境の塀を見ている。やばいぞ、やばいぞ。
「違う!違うのドロロ!」
「へ?」
「殿……?」
視線がわたしへ向けられた。その瞳は少し怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
「どういうことでござるか。」
「どうもこうも、ちょっといまからそっちにいくからまってて!」
完全に勘違いしている。わたしは急いで部屋を出て、階段を下りて、サンダルを履いて家を出た。
すると玄関前にドロロが腕を組んでたたずんでいる。
「殿はギロロ殿のことを―――」
「違うの!わたし、ドロロへの手紙をベランダから飛ばしたのっ!そしたらそれがギロロのほうにいっちゃって……それで、」
ここまでいったらもう直接言うしかない。
「ドロロ、一緒にお花見行かない!?」
ドロロは虚を突かれたような顔になった。
握りしめたこぶしにじんわりと汗がにじむ。
「拙者と……花見?それを、手紙に書いたでござるか?」
「そう、だって、直接誘うのは勇気がいるから……」
といいながらも直接誘っている自分がいる。おかしな話だ。
頬が、身体が徐々に熱を帯びていく。
「拙者、てっきり殿がギロロ殿に心変わりをしてしまったのかと……。いらぬ心配でござったな。」
「わ、わたしドロロいがい見えないからっ!その、ぜんぜん心配いらないから!」
熱に浮かされたわたしは少し大胆で、それは自覚しているけれど、止まらない。
こみ上げてくる思いを言葉にして伝えたかった。
「ドロロのことが、好きだよ。」
「殿、その……照れるでござる。それに勘違いして申し訳ないでござる。あと、」
ちょいちょい、と手招きをするのでしゃがみこんで耳に髪をかけると、ドロロがそこへ顔を近づけて
そっと呟いた。
「拙者も好きでござる。」
久々にかいたので、リハビリ作品。
落ちの付け方を忘れてしまった。