今日はとても天気のいい日だった。ぽかぽかと太陽が暖かくて、洗濯物もすぐに乾いた。洗濯物を取り込んで日の当たる場所で畳んでいると、暇を持て余したジョセフがそばによってきて、「なァー」と横から声がかかる。 「ん?」 畳む手を止めずに返事をする。 「こんなに天気がいいのによォー、家で暇を持て余してるなんてどうかと思うぜ」 「暇じゃないもん、わたし。暇なら手伝ってよ」 「俺、たためないもんねーだ」 悪びれもなく言ったジョセフ。まったくこいつは。たためないことを自慢するように言ってくれちゃって。ちらっと横目でジョセフを見ると、横になっていた。 「畳み終わったら夕飯の買い物いこっか」 「おう! じゃあ待ってる」 それきりジョセフはしゃべらなくなった。わたしはせっせかと洗濯物を畳み、最後の一枚を畳み終えたところで、ふう、と一息ついて「終わったよ」と声をかけるが、ジョセフは何も言わない。 「ジョセフ?」 ジョセフの顔を覗き込むと、彼は目を閉じてすーすー寝息を立てていた。つまり、眠ってしまったというわけだ。なんだかあどけないその寝顔に、わたしは見入ってしまった。体格も、態度もでかいジョセフなのだが、横になって寝ているとなんだかかわいく見える。わたしもジョセフの隣に横になり、その様子をじっと観察する。 (……まだイビキをかいてないね) 夜、一緒に寝ていると、ジョセフは決まってイビキをかく。うるさくて寝れないので、絶対にジョセフよりも先に寝るように心がけているんだけど、今はかいてない。 「買い物行くよー?」 小さい声で言いながら、わたしはジョセフの癖の強いつんつんとした髪を撫で付ける。撫で付けても撫で付けてもぴょんぴょんと主張を続けるその髪の毛が可笑しくて、わたしは少し笑う。 「んぁ……」 その行動で目が覚めたのか、ジョセフがうっすら目を開けた。と、その矢先、わたしはその大きな腕に抱え込まれる。そして再びジョセフは規則正しい寝息を立て始めた。 (ジョセフったら、寝ぼけてるんだ) ああ、ジョセフの匂いがする。おんなじ洗剤で洗っていても、彼の独特の匂いがある。それは所謂体臭というのだろうか。わたしはこの匂いが好きだったりする。そんな匂いに囲まれて、わたしはとっても穏やかな気持ちになる。付き合いたての頃はジョセフとこんなに近くにいるだけで心臓が爆発しそうになっていたが、結婚した今では一緒にいると逆にほっとする。まるで精神安定剤みたいだ。こうやってそばにいるのが当たり前みたいな存在。 (ジョセフと結婚して、本当によかったよ) 『ジョセフ・ジョースター。汝、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、 富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、 真心を尽くすことを誓いますか』 『誓います』 『・。汝、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、 貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか。』 『誓います』 ひっそりと執り行ったわたしたちの結婚式。 『それでは誓いの口づけを』 なんだか照れくさいね、なんて言いながら交わした誓いのキス。急に結婚式の様子が思い返されて、ちょっぴり照れくさい。 子供が生まれても、孫が生まれても、死が分かつその時まで、いつまでもいつまでも、一緒にいたいなあ。願わくば、生まれ変わった後も、一緒にいたい。こう思ってるのはわたしだけかな。ジョセフもおんなじことを考えてくれているといいなあ、と願いながら、わたしはそっと目を閉じた。 そろそろジョセフがイビキをかき始めるころだ。 愛し愛され ぼくらは生きる (2013.01.08) |