「こ、これは一体!」 パパスらしき人の声が聞こえてきて、意識がだんだんと戻ってくる。 「ほっほっほ、あなたですね。私の可愛い部下たちをやっつけてくれたのは。いでよ、ジャミ!ゴンズ!」 ゲマの声とともに現れた魔物は、馬と豚を凶悪にさせたような魔物たちだった。パパスは無駄な動きを一つせず、華麗にジャミとゴンズを追い詰めていく。 「ほっほっほっほ。見事な戦いぶりですね。でも、こうするとどうでしょう?」 ふわ、と魔法の力での体が宙に浮く。 「この子どもの命が惜しくなければ存分に戦いなさい。でも、この子どもの魂は永遠に地獄をさまようことになるでしょう。ほっほっほっほ」 「くっ……!」 とたん攻め込んでいたパパスの動きが、守りに変わる。ゲマがひどく楽しそうに笑い声を上げる。今すぐにでも倒したいが、倒すことは即ち息子の死を意味する。それはパパスにとって、一番いやなことだった。もう負けるしか道はないのだが、自ら負けることなんて難しい。 だんだんと傷ついていく様を、はぼんやりとする意識の中、しっかりと脳裏に焼き付けていた。 傷つく姿なんて見たくないけれど、見なきゃいけないんだと思った。涙が一筋つうっと伝った。 この姿を恐らく一生忘れてはいけない。 「うっ……」 パパスがとうとう自身を支えきれずに倒れこんだ。ゲマが近寄り生死を確認する。 「おや、まだ息があるみたいですね」 「! 気づいているか?! ……はあ、はあ。実は、お前の母さんは、まだ、生きている、はず……。わしに、かわってっ、母さんをっ!?!?」 パパスの身体が炎に包まれた。 「ぬわあああああああああ!!!!!」 断末魔の叫び声とは、まさにこれのことだろう。 「ほっほっほ。子を想う気持ちは、いつみてもいいものですねぇ。しかし、心配はいりません。おまえの息子は我が教祖様の奴隷として一生幸せに暮らすことでしょう。ほっほっほっほ。ジャミ、ゴンズ、この子どもたちを運びなさい」 ゲマが話し終える頃には、パパスの存在は跡かたもなくなっていた。焦げ跡が少し残っているくらいだ。とても衝撃的でショックなこの光景を最後に、の意識は途切れた。 「ゲマ様、このキラーパンサーの子は?」 「捨てておきなさい。野にかえればやがてその魔性を取り戻すはず。……ん、待ちなさい」 を運び出そうとしたジャミを呼びとめる。 「この子どもは不思議な宝石を持っていますね」 の懐から出てきた、金色の宝石――ゴールドオーブを、ゲマがしげしげと見つめる。 「もしやこの宝石は……。まあ、どちにしろこうしておくとしましょう。」 ゴールドオーブはゲマの手中で砕け散った。 これから始まる過酷な奴隷生活は、今までの暮らしとは180度違うものだった。 最後の日 |