禍々しく燃え上がる赤や、黒や、蒼の炎が視界に広がる。見たことも聞いたこともない混沌とした空間だった。は奥にある巨大な威圧感を放つそれを見据えて、今まで自分達が歩んできた旅路を静かに思い出す。
辛かったこともあった、泣きたくなることもあった、くじけそうになることもあった。でもそれ以上に楽しいことがたくさんあった。それもこれも、すべて導かれし者として集った仲間達のおかげであることをは強く感じる。
思えば様々なことを知った旅でもあった。
最初はアリーナのお供として旅について行き、エンドールの武術大会でデスピサロと言う強大な存在を知り、ミネアに出会い、自分が導かれし者だと言う事を知り、世界を救う使命を知り、に出会い、愛を知り、生まれて初めて将来を共にしたいと思った。
そのと、そして仲間達と歩んできたこの旅路を、今では遠い昔の事に感じる。まだ旅路の途中なのに、もうこの旅も終わりを迎えるからか、懐かしい気持ちでいっぱいだった。
隣にいるをそっと見上げれば、彼は優しい顔でこちらを見ていた。どちらともなく手をつなぎ、互いの存在を確かめるようにぎゅっと握り締めた。
(大丈夫、わたし達なら勝てます)
このぬくもりが消えないように。
(大丈夫、世界は救えます)
世界の人々が安心して笑えるように、そしてサントハイムの人々が無事に戻ってくるように。
(大丈夫、わたし達は約束を果たせます)
最終決戦前夜、交わした約束を思い返して、そっと目をつぶる。
―――自分は自分にできることを死ぬ気でやるだけだ。―――
「さあ、行こう」
の言葉を皮切りに、導かれし者たちは歩き出した。旅路の最終地点であるデスピサロのもとへ。