耐え切れなくて、はリンクの体を力いっぱい押して、距離をあける。リンクは傷ついたようなそんな顔をしていた。自分が拒否されたと思ったのだろう。けれどそれに関して弁解する余裕なんて生憎にはなくて、自分の想いをすべてリンクにぶつけた。

「っわたしはね!! リンクを、わたしだけのものにしたい! リンクと結婚したいし、リンクとずっと一緒にいたいよ!」

 ずっと自分の心の奥にあった、想い。この想いを告げれば、今まで通りの関係じゃいられなくなることくらいわかっている。だからこそ今まで言えないでいた。でももう、逃げてはいけないんだ。真っ向からぶつかって、フラれる時が来たのだ。

「ほかの誰でもない、リンクなんだよ! シークじゃダメなんだよ。ねえ、リンクはどう? サリアや、ゼルダ姫じゃなくて、わたしじゃなきゃだめ? わたしじゃなくてもいいなら、リンクの好きとわたしの好きは似ているだけで、まったく違う好きなんだよ」

 リンクを真剣な表情で見つめる。対するリンクものことを真剣なまなざしで見つめ返す。今にも泣きだしそうな顔。

「俺だって、とおんなじ気持ちだ!! なんでサリアとゼルダが出てくるかよくわかんない!! だってのことしか考えてないのに、二人が出てくるわけないじゃん! 何が違うの? 俺との好きは何が違うの?」

 なぜだか喧嘩のように怒鳴りあう。

「わかんないよ、わたしじゃなくてもいいんじゃないかってわたしは思ってしまうの!」
「それがよくわかんない! だって、俺、が大好きだって言ってるじゃん! サリアと、ゼルダの好きとは違うんだよ! なんか、全然……違うんだよ! なんていえばいいかわかんないけど! がいちばんで、以外好きじゃない!」

 うっ、と言葉に詰まった。心の奥底から求めていた言葉をまくし立てられて、の頭は真っ白になる。だって、サリアとゼルダへの好きとは違うっていってくれた。がいちばんで、以外好きじゃない、とも言ってくれた。

「わたしね、こ、わいの、わたしの好きと、リンクの好きが、違ってたら……! それに気づいたとき、惨めな気持ちになる! リンクに迷惑かけちゃう!!」

 こんなにリンクに対して感情的になったのはきっと初めてだろう。今までどこか自分のほうが年上なだけに、理性が常にそこにはあった。そして年上だから、常に姉であらねばという気持ちもあった。けれど今は、そんなものが一つもない。等身大のが、等身大のリンクにぶつかっている。

「だから、何も違くないよ! 俺、のこと、好きだ! 俺と、結婚したい!! ずっと一緒にいたい!! 何が違うの?!」
「だって――――」
「もう、黙ってよ」

 そういってリンクは再びを抱きしめた。もう何の抗議も受け付けないよ、とでもいうように、ぎゅっと、抱きしめた。の抗議はその思惑通りピタッと止まった。

「ずっとこうしてたいんだ。もう二度と、離ればなれなんて嫌なんだ」
「……わたしも」
「ね、一緒でしょ?」


 ―――ああ、一緒だ。わたしとリンクの気持ちは、一緒だったんだ。


「リンク、好きだよ。ずっと一緒にいて」
「ずうっと一緒。と俺は、ずうっと一緒だ」
「うん……」

 マロン、わたしとリンクは、想いあってたよ。なんて頭の隅でぼんやり考えながら、リンクの背中に手をまわして、ぎゅっと力を込めた。




愛をこめて




「あのね、俺ね、いつかわかんないんだけどね、ずっと昔からのこと好きだったんだよ」
「そうなの? わたしもね、気付いたらリンクのこと好きになってたんだよ」
「ほんと!? 嬉しいな! じゃあさ、ガノンドロフを倒したら、結婚しようね」
「うん、しようねー」

 仲良く会話を交わしながら、エポナに乗りながらハイラル平原をてこてこ行く。やっぱりリンクの中身はお子ちゃまで、どことなく保護者の気分でしゃべってしまうのだが、やっぱりうれしい。結婚しようなんて、言われるとやっぱり幸せだ。

『ナビィ、ほんとうれしいナ!』
「あ、ナビィ、ずっと……その、見てたよね?」
『うん、みてたヨ! 、グッジョブだったヨ!! ほらね、ナビィの言った通りだったでしょ?』
「そうだね、さすがナビィ」
「えーどういう意味ー?」

 リンクが首を傾げるが、はナビィは顔を合わせて、ふふふ、と微笑む。

「なんでもなーい」
「えー! 、秘密なの? 俺に言えないことなの?」

 振り向いたリンクが、今にも泣きそうな顔だ。

「ちがうんだよ、リンク。わたし、ナビィに相談してたの。リンクのこと好きなのーって。ねっナビィ」
『ネッ』
「あ、そうだったの? 相談なんてしなくても、俺はのこと好きだって言ってたのにー!」
「女の子って、難しいんだよ」
「へえー。俺男だからわかんないや」
「そういうこと」

 いつ元の世界に戻るかもわからない、本当は中身がずうっと年上のわたしを、こんなに好きだと言ってくれるなんて。これほどの幸せをいただいて、あとで罰が当たる気がしてならない。怖いくらい幸せって、こういうことなのだろう。
 ありがとう、リンク。あなたがガノンドロフを倒すその日まで、そしてそれからも、精一杯支えるから。わたしがそばにいるからね。