入ってすぐにある真ん中の大きな階段を上って、そこからさらに左に曲がって扉を開ける。このフロアの底はマグマで、移動は、いくつか突き出ているある程度平らな岩石の上を飛びながらするようだった。そしてそのフロアの一番奥でダルニアの姿をとらえた。彼は扉を開けて奥へと進もうとしているところだった。

「ダルニア!!」

 リンクがすかさず呼び止めると、ダルニアは動作を止めて、こちらを振り返った。リンクに気が付くとはっと目を見開いた。

「おめえは……リンクじゃねえか! しばらく会わねえうちに大きくなりやがって……」
「ダルニア、久しぶり! 俺、ダルニアを―――」
「キョーダイ」

 リンクの言葉を遮りそう言った。時間がないのだろう。

「俺は邪竜を封じに行く。もしものときは……頼んだ。今度は俺たちが力になる、なんて言っておきながらすまねぇ。それじゃあな」

 そういってダルニアは扉の奥へと消えていった。彼は自分が死ぬことも覚悟している。

「もしもなんて、絶対に起こさない。……よし、俺たちも行こう、!」
『待ってリンク、あそこに宝箱があるヨ』

 ダルニアが進んだ扉は入ってすぐ正面のところだが、ナビィの示したところはそこから左に行ったところの岩石の上だ。宝箱は岩石と同じような色をしているためダルニアは気づかなかったのだろう。

「じゃあ俺あれとってくるから、は先にダルニアのいた岩のところまでいって」

 ダルニアがいたところまで行くのには、岩石と岩石との間が狭いので足を滑らせてマグマへまっしぐらというのはなさそうで、いくら運動神経が並のでもいけそうだった。は頷いて、慎重に岩石と岩石とを飛んでいく。無事にたどり着いたてリンクを確認すると、リンクも宝箱を開けて中身を取り出していた。

「ハンマーだ! すっげー!」

 目を輝かせて新しい武器を眺めている。仕舞にはそのハンマーを振り回している。これは長引きそうだと思ったので、は早めにリンクに声をかける。

「こら、リンク、早くいこ!」
「今いく!」

 リンクがぴょんぴょんと飛んですぐにの待つ岩石へとやってきた。二人は扉を開けて、ダルニアの待つところへ急いだ。




邪竜ヴァルバジア




 入った瞬間、耳をつんざく鳴き声のようなものが聞こえてきた。その鳴き声の主はすぐにわかった。炎を身にまとい空を舞う邪竜ヴァルバジアだった。ヴァルバジアは口から炎を吐きながら、地面に空いたマグマで満たされている穴の中に入り込んでいった。穴はいくつもあって、しばらくすると、別の穴から火炎竜はぐつぐつとマグマの噴出とともに出てきて再び空を舞った。

「ダルニアいないね、もしかして……」
「くそ……! 、ここで待ってて!! 俺いってくる!!」

 ヴァルバジアは駆けだしたリンクに気づいた。盾を構えながら迫ってくるヴァルバジアを待ち、寸のところで飛び退く。そして竜の弱点と思われる首にマスターソードで切りかかるが、しかし鱗がかたくてびくともしなかった。

「かってー!!」

 そうこうしてる間にヴァルバジアは穴の中に入り込んでいく。それならと、先ほど入手したハンマーに持ち変える。リンクはきょろきょろとすべての穴を観察し、ぐつぐつと煮えたぎってきた穴を見つけすぐさま駆けより、思い切りハンマーを天にかざす。

「よいしょ!」

 そのまま真っ直ぐ振り下ろさず、ヴァルバジアの首を横からハンマーで殴った。ヴァルバジアは鳴き声を上げて、そのまま横に吹き飛ぶ。随分と効いているようで、弱点と見える首の内側を露呈している。外側は堅い鱗で覆われていたが、内側は鱗で覆われていない。

「覚悟しろ!!」

 すかさず首にマスターソードを突き刺す。ヴァルバジアが、もがき苦しみ始める前にマスターソードを抜き取り、邪竜の火の粉を浴びぬようリンクは盾を構える。案の定すぐに苦しみ始め、邪竜は苦しそうに空を舞い、最後は自身の業火に身を燃やした。

ー! 倒したよー!!」

 リンクがぶんぶんとマスターソードを振り回してにアピールをする。

「お疲れー!!」

  が駆け寄り、抱き着こうとしたが、刹那リンクの体が光に包まれて、その場からふわりと消えた。前回同様、賢者の間とやらに召喚されたのだろう。差し詰め賢者はダルニアだろう。というか、ダルニアでなければ困る。少しだけ虚しい気持ちを抱きつつも、は足場に気を付けながら炎の神殿を後にした。