もうずっと一緒にいて、なんなら生まれた時からずうっと一緒で、双子のと同じくらい一緒にいるんじゃないかな。父さんや母さんよりも、ずっと一緒にいる人。

?」

 昔とあまり変わらない顔で、きょとんと首をかしげた。

ちゃんってさ、ぜーんぜん変わらないよね。全然童顔」
「そーう? うれしいな」

 本当にうれしいらしく、満面の笑みを浮かべた。俺はこの、ちゃんのことが好きだった。だからピピンと一緒にいる姿を見るのが本当にいやだった。彼もまたちゃんのことをずっと好きで、しかも俺よりもちゃんとずっと年が近いからすごい焦る。
 いつかピピンのものになってしまいそうで。

「なんだ、こんなとこにいたのか」
「あらお兄ちゃん、どうかしたの?」
「ピピンが探してたよ、なんだか報告したいことがあるみたいだったよ」
「へえ、なんだろう、ちょっといってくるね、
「まって!」

 余裕のない声が出てしまった。ちゃんは椅子から立ち上がったところで、「ん?」と、止まった。父さんはいつの間にかふら、と立ち去っていた。

「いかないでよ、ちゃん」
「どうかしたの?」

  ちゃんはきっと俺のこと、弟くらいにしか思ってない。けどね―――

「ピピンの所になんて、いかないで」
「どうしたのってば、珍しい」
「とにかくいかないでよ、お願い」

 あらあら、と笑うちゃんをぎゅっと抱きしめると、彼女の笑い声は一瞬で消えた。

「絶対にいかせない」
……? あの、どうしたの?」

 初めて抱きしめた女性の体は、男よりも随分と細かった。こういうのを華奢、っていうんだろうな。

ちゃん」
「ん?」
「俺を、愛して」
「あ……い?」

 少し身体を離して見つめあえば、ちゃんの瞳が大きく見開かれて揺れていた。まさかこんなことを俺にされるとは思わなかったのだろう。

ちゃん、」
「……は、い」
「キス、してもいい?」
「!!! だ、だめよ、は、甥っ子なんだから」
「けど、ちゃんと父さんは本当の兄弟じゃないよね」

 わたし、拾われ子なんだー。と、ころころと笑いながらいっていたちゃん。形式は甥っ子だろうが、血はつながっていないんだから。

「で……も、」
「ここで大事なのって、俺のことを好きか、好きじゃないか、それだけじゃない?」
「ん……」
「俺を愛してよ」

 !!! ちゃんが、俺に、きつく抱きついてきた。

?」
「んっ?」

 ちゃんが顔をあげた。ちゃんの表情は、今まで見たことのない艶めかしい笑みだった。どきん、と心臓が深く脈打った。

「お姉さんを本気にさせたら、怖いんだからね」

 両頬に手を添えられて、ちゃんの顔が迫ってきたと思ったら、俺のくちびるにちゃんのが重なった。
 長い間重なり合って、そして離れた。

「どうなっても知らないんだから」

 ちゃんの顔はいつも通り、まるで子どもみたいな笑顔だった。いたずらっ子が、いたずらを考えてるときみたいな。




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