「あんたたち、デートとかしたくないのかい?」

マーニャに問われて、二人はきょとんとした。
そんな考えは頭になかった。言われてみれば、確かに。という程度で、一緒にいるだけで満足していた。
夜の宿屋のロビー。マーニャは呆れたようにため息をついた。

「無欲というか、なんというか……。たまにはオフにして、お二人でたのしめばいいじゃないか。」
「……どーせマーニャは、その間お酒を飲むかカジノを楽しむかしたいんだろう。」
「さっすが勇者。勘が鋭いじゃないか。」
「まったく。一日でも早く世界に平和を、だろ?」
「まあね。まあ、あとはお二人で楽しみなよ。おやすみ。」

ウインクをしてマーニャは立ち去って行った。
取り残されたは目を合わせて微笑み合った。

「デート、考えたこともなかったですね。」
「確かにね。したい?。」
「うーん……でも、一日でも早く世界に平和を、ですから。」

へらっと笑うと、は口角を上げて頭を撫でた。
デート、そういわれるとしてみたい気もするが、けれどの言うとおり世界に一日でも、一秒でも早く
平和を取り戻したい。なのでこの気持ちは、封印だ。

「いい子だね。」
「へへ。」
「もう遅いから、寝ようか。」

すくっとが立ち上がったのでも立ち上がった。もう少し一緒にいたいけど、我慢だ。
いつまで一緒にいたって、結局もう少し一緒にいたい、と思ってしまうのはもう病気ともいえるかもしれない。
毎日こうやって夜にお話をして、もどかしい思いを抱えながら寝室へ向かう。
そして女子部屋の前までやってきて、

「おやすみ、。」

といってのくちびるにひとつ、ながいキスをおとす。
この瞬間がたまらなく好きだ。きゅん、と胸が縮こまって、もっとしたい、もっと触れていたい、と欲望が
暴れだしそうになる。けれどそれをすべて抑えて、にこっと笑って手を振る。

「おやすみなさい、。」

楽しいだけでない旅ではない。けれどこうやって毎日が素敵な終わりを迎えて、次の日がやってくる。
これがたまらなく嬉しくて、愛おしい。




いつだって君と僕なら。




導かれしものたちは今日も陸路を行く。

、昨日はよく眠れた?」
「はい!ばっちりです。はどうですか?」
「ばっちり。」

といってはにかっと笑ってピースを作った。
いつもいつも思うが彼の笑顔には何か不思議なものがあるのだと思う。
彼の笑顔を見るたびに胸がきゅっと締め付けられる。大好きだと叫びたくなる。
毎日隣を歩いてもときめきが生まれる。これって素晴らしいことではないだろうか。
だからデートなんて考えが浮かばなかったんだ。

、昨日はマーニャの手前あんなこといったけど、デートしたい?」
「ああー。」

一日でも早く世界に平和を、なんて言っていた。
あとあといろいろ考えたのだろう。はあれを聞いてどう思ったのだろう、本当はデートをしたいんじゃないか?
なんて。

「一つ言うと、俺も年頃の男だからしたいって思うよ。」

意外な答えには目を丸くした。昨夜はどうやら勇者としての模範解答を述べたらしい。
本当の気持ちを知れての胸がまた縮こまった。
――なんだ、も一緒の気持ちです……。

「もちろん、わたしもできればしたいです。でも、デートできなくても、毎日がデートみたいって思うんです。」

毎日隣を歩くたび、どきどきして、楽しくて、うれしくて……。
デートみたいなんで、いいんです。
毎日毎秒、いつだってのことが好きです。それが感じられるって、デートと一緒ですよ。きっと。

「だから、デートは世界に平和が戻ってからのお預けですね。」
「早く平和を取り戻さないとな。」

そういってはさりげなくの手を取り、ぎゅっと握った。

「デートごっこくらいは、いいよね?」
「ぅ、あ、はい!」

周りにみんなの冷やかしなんてには一つ聞こえなくて、ただただ繋がれた右手の熱を感じて
その熱に浮かされるだけだった。


===============================================
リクエストしていただきました大宮さまへ贈ります!青山なんかにリクエストしてくださって
本当に恐縮です。がくがく。お気に召されましたでしょうか。ぶるぶる。
また遊びに来てくださいね!青山でした♪
Happy Birth Day, and I wish your happiness!
===============================================