俺の心の底を渦巻いていた暗い、暗い、負の感情が、なんだか浄化された気分だった。
生きる意味なんてわからなくて、世界を救う意味なんてわからなくて、自分が勇者なんて言われるのが嫌で、
昔の自分からは考えられないくらい、根暗な自分がいたと思う。
だって、俺は一度すべてを失った。
育ててくれた親、ずっと一緒だった幼馴染、剣の稽古をつけてくれた人、魔法を教えてくれた人。
俺が育つのを温かい目で見守ってくれていた村の人々。…みんなみんないい人だった。
俺はそんな人たちをいっぺんになくしてしまった。それなのに、生きてだとか、世界を救えだとか、正直死にたかった。
村の人たちみんなに守られて、それで俺が”勇者”なんて言われて。俺は勇者じゃない。そうやって叫びたかった。
だけど、そんな俺に、は意味を与えてくれた。
生きる意味、世界を救う意味、戦う意味。
何もない俺に、たくさんの意味をくれた。俺はからっぽじゃなくなった。
それがどれほど心強いことか。どれほど俺にとっての救いか。
(そういえば、俺…の事抱きしめちゃった。)
ふと先ほどの出来事を思い出して、急に恥ずかしくなった。
手に抱きしめた感触がよみがえってきた。妙にリアルで、まるで今もを抱きしめているようで
ドキリとした。それから、の笑顔が思い出された。俺の頭の中はでいっぱいになってしまった。
「…なんなんだ。」
ぎゅっと目をつぶってみても、腕を組んでみても、何をしてもが頭から離れなくて、逆に
ますますが強くなっていく気がした。が消えない。が止まらない。
それならば、
今夜くらいは自然の思考に委ねて、のことを考えるのも悪くはない。
消えないなら、止まらないなら、そのままにしておけばいい。
、俺は
二度となにも失いたくない。
だから、戦う。