もしも、明日世界が終わっちゃうとしたら。なんて想像した事、誰だってあると思う。私も想像してみた。最後の瞬間は、どうするんだろう。と私は漠然と考えてみる。

「世界が終わる瞬間にさ」
「ん?」

 隣にいる新一が、推理小説を読んだまま適当に返事をする。私はそのことに多少複雑な感情を抱きながらも、何も言わずに言葉を続ける。なぜなら、こんなことは日常茶飯事だから。だから私はいちいち腹を立てて怒ったりなんて事はしない。少し、悲しいけどね。

「手をつないでたらさ」
「おう」
「来世でも一緒になれるかな?」

 たとえば隕石が落ちてきて、地球が滅亡するとする。その瞬間を、私たちは手をつないで待つとする。そしたら……いつになるかわからないけど、来世でもこうして、二人は恋に落ちる事が出来るのかな。手をつなげるかしら。

「さあな」
「……なんて適当な返事」
「んなこといわれたって、俺が知るわけねぇだろ」

 淡白だなあ。と心の中でぼやく。もうちょっと、ロマンチックな事いってくれたっていいじゃないのね。そうかもな。だとか。まあ、そんなこと言われるなんて、これっぽっちも思ってないけどね。これっぽっちも。新一はきっと、来世とか、信じてないと思うし。

「……あ」

 何か思いついたような声を出した新一。私は横を見れば、彼はその瞬間にぐい、と肩を抱き寄せられた。反射的に出てきた小さな悲鳴は、新一の強引なキスに飲み込まれた。

「世界が終わる、なんてこといつになるかわかんねーだろ」

 唇を離して開口一番にそういった。私は頷いた。

「いっそ、心中してみるか?」

 彼の提案は非現実的すぎて、少し笑えた。彼らしくない。私の笑いが癪に障ったのか、彼はむっと眉を寄せてあいている手で私の頬をつねった。痛い。

「なにふぁ」
「俺の事笑ったからだ」
「だっふぇー」
「わあってるよ。俺らしくないってことぐらいな。別に俺だって真剣な提案って訳じゃないさ。でもよ」
「ふん」
「心中して、次またと結ばれるんだったら、それも悪かない」
「……しんいふぃ」

 もしかしたら、新一となら、永遠を行けるかもしれない。そんなこと考えてるのは、私だけ? ねえ、心中しちゃう?





しないけど、ね!

だって、”今”だって大切だもんね。

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