はじめて人を好きになった。
そう自覚したのはつい最近で、気付いた瞬間俺はそいつと普段通りに接するのが難しくなった。
同じ屋根の下に住むうえでそれはとても面倒くさくて、ときどき自分でむしゃくしゃするんだけど、
だからといって好きだと自覚する前に戻れるわけでもなくて、結局そのむしゃくしゃは自分の中だけにとどまる。
そいつは俺と同じ変身体質のやつ。、は俺とは真逆で、水をかぶると男になる。

「らんま、帰ってたんだ。」

自室でくつろいでいると、が通りすがり足を止めて俺に声をかけた。

「あー、おう。」
「一緒に帰ろうっていってるじゃん。」
「わ、るい。」

はいつも俺に、一緒に帰ろうと誘ってくれる。

「あかねと一緒だと喧嘩しちゃうから？」

そんなことじゃない。

「ったりめーだ。一緒に帰ってられるかってんだ。」

と一緒に帰る？何をしゃべればいいんだ、なんっも思いつかねえ。
ああ、らんま様ともあろうものが目も合わせられない。情けない。おふくろに合わす顔がないぜ。

「ねえらんま。」

が俺の部屋に入ってきて、俺の隣にちょこんとすわった。
心臓が、壊れそうなくらい早鐘を打つのがわかる。

「きょうの数学なんだけどさ、」

制服からのぞく生足、微笑みをたたえたその顔。

「よくわからなかったんだけど、教えてくれ、きゃっ！！！」

急に電気が消えて、急なことに驚いたが俺に抱きつく。
夕飯時だけに、ブレーカーが落ちたのだろう。

「だ、大丈夫か？」

肩に手を添えると、ゆるゆるとが体を起こした。
暗がりでよく見えないが、照れ笑いを浮かべているのが見える。

「ごめんね。」

見つめあい、時が止まる。
二階には俺と以外誰もいない。暗闇、至近距離、心臓の音ばかりよく聞こえる。

「……」

肩に添えた手に力を込める。は俺を見つめ続けている。
その瞳から彼女の気持ちはうかがえない。

と、つながりたい。

頭が真っ白の中、その気持ちが俺の頭を支配する。

俺は徐々にとの距離を縮める。
キスを、したいと思ったからだ。もう少しでくちびるが重なる、そのとき
電気が回復し、俺たちは闇から放り出されて光の下に野ざらしになった。
俺はぱっとから離れた。なにをやっているんだ、俺は。

「ごめ……頭冷やす。」

部屋から出て、階段を駆け下り、靴を履いて外へ出た。

（にどんな顔で会えばいいんだ……畜生……！）




（らんまに……キスされそうになった。）

取り残されたわたしは、呆然としていた。
らんま、すごい驚いてたなあ、わたしは一体どんな顔してたんだろう。




（されても構わなかったのに）