…ねえ。」
「そう。ちゃんはお父さんの妹なんでしょ?お父さんって、どんな人だった?」

ラインハット城にやってきたロイとレイが、彼らの父でありの兄であるについて尋ねてきた。
うーん。と思案を巡らせていると、ヘンリーが口を挟んでくる。

「いいやつだぜ!」
「ヘンリー。それは、曖昧すぎでしょう。」

びしっとツッコミを入れる。ヘンリーへのツッコミはが担当している。は膝に座っているコリンズをそっとおろして
簡易キッチンへ向かう。客人にお茶を出さねば。と思って冷蔵庫の中からオレンジジュースを取り出し、三人分注ぐ。
それから棚からお菓子を適当に選んで、それらをソファに座るロイとレイの目の前にあるテーブルに置き、ひとつのグラスを
コリンズに手渡す。

「「ありがとうちゃん。」」
「いえいえ。」
「ははうえ、だいすき!」

ロイやレイに比べていささかおぼつかない口調で礼を述べたコリンズが、グラスをテーブルに置いて
右隣に座ったに抱き付く。それを見た、コリンズの左隣に座るヘンリーが大人気なく、
のあいている右側に移動してぎゅっと抱きついた。

ちゃん。俺にもかまって?」
「ちょ、ヘンリー!大人なんだから、我慢しなさい。それにいまはロイとレイもきてるんだからね!」
「べつにいいよちゃん。おかまいなく。」

目の前で繰り広げられる別段あわてた様子もなく、のほほんとロイが言って、オレンジジュースを一口飲んだ。
レイも、そうそう。とか言いながら同じくオレンジジュースを飲む。とフローラもこんなかんじなんだろうか。

「でもとにかく離れてヘンリー!」
「そうだよちちうえ。」
「このやろ…覚えてろよコリンズ。」

ヘンリーがしぶしぶから離れて、厳しい視線をコリンズに向けるが、当のコリンズはに抱きつきながら
とても幸せそうな表情だ。はコリンズを抱き上げて自分のひざの上に座らせると、今度は目の前から
抱きつく。実はコリンズはこのポジションが一番好きなのだ。の胸のふくらみを顔に感じられ、
とっても安心して、気持ちよく、母のぬくもりを一身に感じられる。

「で、の話だよね。」
「そうそう。」
「妹のわたしから見ても優しい男だったよ。正義感強くて、人を惹きつける何かを持ってるよ。
 一緒に旅してて思ったのは、意外と女性にモテるってことかな。まあ、結構整った顔してるもんね。」
「えっまさかのこと実は…」
「黙っててもらえる?」

隣で勝手に真っ青になっているヘンリーを冷たい目で見た。

「父さんはなんで母さんと結婚したの?」
「最初は財産目的かと思ったけどね、話を聞くと一目惚れらしいよ。このまえ一緒に飲んだときに散々惚気られたよ。
 『あの青空のような瞳がステキだ。』『笑顔が可愛すぎるんだ』『優しいし、照れ屋だし、もう全部がいい。』って。」
「そうなんだ。」
「ああ、アイツ酔うとべらべら喋るもんな。」
「そうなのよ。ヘンリーも性格がいつもより三割増しぐらいに陽気になるよね。」
もな。」

そしてフローラもだったりする。

「あとは何か聞きたいことある?」

しがみつくようにに抱きついているコリンズの頭をなでながらロイとレイにたずねると
二人は顔を見合わせて、うん、と頷きあった。

「おもしろはずかしエピソードを…」
の?」
「「うん!!」」

初めてこんなに目を輝かせているロイとレイを見たような気がした。
こぶしを握ってをまっすぐと見る目は、ぎんぎら輝いていた。

「そうだなぁ…。あれはレヌール城におばけ退治にいったときかな。」

斜め上に視線をずらして幼い頃の記憶を手繰り寄せる。
すると突然、部屋のドアが開いた。思わずそちらをみると、噂をすればなんとやら。がいた。

「「げっ、父さん!」」
「げ、じゃないだろう。やっぱりここにいたか。」
「いらっしゃい。いまの話をしてたんだよ。」
「やあ。…俺の話?」

怪訝そうにが眉を寄せる。

「うん。この子たちがのお「ああああちゃん!僕たちそろそろ帰るね!!」
「?あ、うん。」
「ついでにコリンズもグランバニアにお邪魔したらどうだ?」

ヘンリーがちらりコリンズを一瞥するが、コリンズは母の胸の中で「ははうえといっしょにいる」ともごもご言う。
は「夫婦水入らずは当分なさそうだな。」と笑うと、ヘンリーが面白くなさそうにふん、と鼻を鳴らす。

「じゃ、邪魔したね。今度はグランバニアに三人ともきてくれよ。たまには一緒に話がしたい。」
「そうだね。じゃあ今度行くからルーラで迎えに着てね。」
「俺とは二人部屋で頼むぜ。コリンズはロイとレイと一緒に…。」
「はいはい。」