……」

 肩に手をかけ、じっと見つめる。が照れ臭そうに目を細め口角を上げた。普段の様子よりも幾分愛らしいに弥勒も思わず微笑んだ。

「なあに?」
「接吻してもいいか?」
「そんなこと聞かないでよ」
「一応聞いておこうと思いまして」

 弥勒が顔を近づける。徐々に縮まる距離にの心臓がどき、どき、と高鳴っていく。

「愛してる」

 くちびるが触れるか触れないかのときに弥勒が低く魅惑的な声で愛を囁き、いよいよくちびるが触れるときに、がさっと近くから物音が聞こえてきた。二人がそちらを見ると、犬夜叉がそこにはいた。

「邪魔するぜ」

 ずいぶんと不機嫌そうな顔でずかずかとやってきたと思ったら、弥勒の腕を掴みどこかへ連れていく。取り残されたはなんだか虚しくて、とりあえずポケットからリップを取り出して塗ってみた。

+++

「二人で出かけたと思ったらやっぱりこういうことか」
「てめえ邪魔しやがって、どういうつもりだ?」
「俺は断じて認めてないねぇんだよ!」
「お前が認めなくても俺たちは恋人同士なんだよ。悪いな」

 ふ、と口角を吊り上げ笑むと、犬夜叉は悔しそうに乱暴に頭を掻いた。

「俺は負けねぇ!」
「お前はかごめ様なり桔梗様なり、他の女性に目を向けてろ」
「あいにくだが、興味ねえ」
「そんなことは俺の知ったことではないな」

 こんなことを二人が聞いたら犬夜叉は殺されかねないな、と思いつつも軽くあしらう。犬夜叉も随分とに"お熱"なようだった。そんな犬夜叉を見ているとの恋人であることに優越感すら感じる。

「しかしは俺の女だ。あきらめることだな」
「言ってみないとわかんねぇ。見てな!」

 そう言い捨てて犬夜叉はつかつかとのもとへ戻っていく。

「おい待て」

 弥勒の制止も聞かずに犬夜叉はあっというまにのところへやってきた。

「おかえり」
、俺の話を聞いてくれ」

 弥勒が少し後ろで見守るなか、犬夜叉は自らの気持ちを打ち明けようと試みた。

「お、お、俺……」
「うん?」

 の、次の言葉を待ちわびるその無垢な瞳が犬夜叉を焦らせる。

「俺、お前が好きだ! 誰といるよりと一緒にいるのがいい!」
「ああ。わたしも好きだよ」
「ほ、ほんとか!?」
「当たり前だよー」
「ちょ、ちょい待て。……犬夜叉が好きなのか?」

 呆然としている犬夜叉を素通りしの前にやってきて尋ねる。いつも飄々としている弥勒が珍しく動揺しているのが見て取れた。

「う、うん。わからなかった?」
「……いや、あの」

 あまりにショックで言葉が見つからないようだった。

「ざまぁみやがれ弥勒!」
「な、なに? なんでそんな落ち込んでるの?」

 犬夜叉に肩を抱き寄せられつつも今まで見たなかで一番落ち込んでる弥勒が気になる。何か落ち度があったかな? と考えをめぐらせる。

「え、だって、友達としてでしょ?」

 の一言に場が変な雰囲気になった。犬夜叉と弥勒はぽかん、と今まで見たことのない情けない顔になっている。

「……え?」

 絞り出すように犬夜叉が声を出す。

「わたしが犬夜叉のこと嫌ってると思って、弥勒にそのこと聞いたんじゃないの?」
「……おまえって奴は」

 弥勒はにやにやと締まりのない顔で、すっかり力が抜けている犬夜叉からを奪い抱き締めた。

「ちょ、犬夜叉がいるよ!」

 上体を少しそらし弥勒と顔をあわせ、離れろと目で訴える。

「あのな、犬夜叉はこういう意味での好きってことだったんだぜ」
「えっうそ……」
「まったく」

 弥勒がさも面白そうに笑う。対するは自分の発言に恥ずかしいやら、申し訳ないやらで顔が引きつる。

「おかしいと思ったんだよ。ま、俺はのそういうとこ好きだぜ」
「ご、ごめん犬夜叉……悪気はなかったの」

 呆然と虚空を見つめる犬夜叉。このようにしてしまったのは紛れもない自分の発言。とてもいたたまれない気持ちになる。無理矢理弥勒の腕の中から出て、犬夜叉の目の前にいく。

「犬夜叉……」

 なんといえばいいかわからず、名前を呼んだはいいがそれからなにも紡げない。すると犬夜叉の目からじわりと涙がにじみ出てきた。ぎょっとして目を見開き再び名を呼んだ。そして、

「な、泣いてねぇ!」

 と言いながらどこかへ駆けていった。

「ほんとにごめん……」
も罪なおなごですなぁ」

 朗らかに笑った弥勒をきっと睨んだ。



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