「なんだよ! シークのこと好きになったの?」
「へ? なんでわたしが、シークのことを。」
「だってさっき、シークのことうっとり見てたじゃないか!」
ぷりぷりと怒っているリンク。先ほどシークがやってきて、“あーかっこいいな。”と思ったのは事実だ。すらっとした華奢な身体、深紅の瞳、美しいブロンドヘア。かっいいと思わないほうが無理があると言うものだ。しかしうっとりしていた、というのは語弊がある。決してうっとりなんてしていない。
「気のせいだよ。どうしたのリンク、そんなに怒って」
「だって俺はこんなにのこと好きなのに、はシークのことを好きなんて、やだよ」
うるうると瞳を潤ませている。泣くのか、泣くのか、泣くのか? ……こらえた! よしよし、偉いねー。なんて甘やかせば最後、リンクは泣きながら文句を言ってくるだろう。見た目は大人だけに、みっともないことはさせたくない。やめておこう。
「絶対やだから!!!!!!」
リンクはくるっと背を向けてびゅーんと駆け抜けていった。
『いっちゃったネ……』
ナビィがぽつりとつぶやく。
『ナビィちょっと、様子見てくる』
「気を付けてね」
ナビィが見つかったら、リンクに偵察だと勘違いしてしまうだろう。はため息をついて、ハイラル平原に座り込み思考を巡らせる。
「うーん。追いかけるべきか、否か」
それにしても可愛いなあ。あれはやきもちというやつだろう。悪い気はしない。俺はこんなにのこと好きなのに、か。わたしだってこんなに好きなのに。むふふ、とだらしなく顔を緩める。
「よーし! 追いかけよう!!」
すくっと立ち上がり、リンクが走り抜けていった方にも駆けだす。息を弾ませて全力疾走をしていると、ハイラル平原でちょこんと座りこんでいる緑色の男の子を見つける。
「リンクー!!!」
リンクは声に気づいて立ち上がりこちらを向いた。リンクはなおも逃げようと駆けだそうとしたが、遅かった。はあっという間にリンクとの距離を縮め、リンクの背中に飛びついた。ふわっと香るのはリンクの香り。
「はっ離れろ!」
「やだ、離れない! リンク、リンクのこと大好きだよ!」
「俺のことすき!?」
「うん、好き! 大好き!」
リンクは丁寧にの手をほどいて、真正面から向き合う。肩に手が置かれた。かすかに震えてるのは気のせいか。
「シークとどっちが好き……?」
「っていうか、リンクだけ好きだよ」
「ふ、ふうん……っ」
照れてるくせに、ポーカーフェイスを気取っているが、視線が泳いでいてなんだかかわいい。はリンクの胸の中にすっと入りこんで、ぎゅっと抱きしめた。
全力疾走の先に
(やーっと見つけた!!)