野に咲く花の冠を頭にちょこんと載せたはとても可愛らしかった。

「似合うな。なんか、野花の国のお姫さまって感じだ。」

緑生い茂る中に座り込み、
鋼牙を見上げるの顔に笑みがさした。

「そうかな?じゃあ鋼牙くんは、王子さまね。」

鋼牙の手を取り、優しく握る。
ごつごつとしていて、大きな手だ。

「俺はそんな柄じゃねーよ。せいぜい、姫の付き人で。」
「それじゃあ付き人とお姫さまの許されぬ恋だ。」

鋼牙の手をとりながら立ち上がり、二人はとくに宛てもなく歩きだした。

「鋼牙くん、私たち、許されない恋なのです。」
「姫、わかっております。」
「でも私、あなたが好きなのです。片時も離れたくないのです。」
「それでは俺が姫のことを連れ去ってしまいましょう。誰も知らないところで、二人で暮らしましょう。」

終わりの見えないやりとりをしてる途中、鋼牙がをお姫さま抱っこをしてみせる。
花の冠は、器用にも落ちずにの頭に乗っかっていた。

「家を造り、畑をつくりましょう。二人ならうまくいく。」
「そうですね。二人なら、うまくいきます。」

心のそこからそう思うよ。と心のなかで添える。

「なあ、一緒になろうぜ」
「なっ、…!」

さらりと告げられたプロポーズはいとも簡単にの頭を混乱させた。

「だめか?」
「だ、だめとかじゃなくてさ、なんか急だしさらりだし…ああもう!」

まとまらない言葉に腹が立ち、強引に言葉を締めくくる。
鋼牙が小さく笑った。

「そうだな、急だな。でも俺は結構前から思ってた。」
「……私だって、私だって思ってたよ。」
「お、てことは?」
「勿論、一緒になります。」

幸せな気持ちが、心のなかに広がった。
鋼牙はにキスをし、をおろした。

「本当にいいのか?」

真剣な眼差し。それに柔和なほほ笑みで答える。

「鋼牙くんじゃないといやだよ。」
「俺とのこどもは半妖狼だぜ?」
「そうね。」

二人はまるで、それをやると最初から決めていたかのように、口付けを交わした。

「泣いてんなよ。」

苦笑いしながら、鋼牙は目元にじわりと浮かんだ熱い雫を拭ってやる。

「ごめ、なんか、嬉しくて…」
「これからの涙は俺が拭う。そんで、笑わせてやるよ。お姫さま?」
「…うん。」

笑みを浮かべて頷いた。
そして二人は歩きだした。