「快斗くん、………好き、です!」 「知ってるよ」 「へぁ!?」 「ぶっ!! すっげー顔してるぜ」 放課後の廊下。誰もいなくなった学校は、しんとしていて、外で頑張っている野球部の声とか、サッカー部の声とかが聞こえてくる。その声に負けないように声を振り絞っていったのに!! わたしの一世一代の告白を、この人、知ってるって! そんでもってすごい顔してるって! ひどいよ快斗くん、すっごい勇気を出して、告白したのに……! 確かに顔、真っ赤だし、必死な顔してると思うけど……! 噴出さなくてもいいじゃん……! 「なんで……知ってるの?」 「見てりゃあわかるよ、俺に話す時だけ、すっげー顔赤くするしよ」 ニヤニヤと人の悪い笑顔を浮かべて言う快斗くん。なんだよこいつ、性格わるっっ!でも、そんなところも好きなわけで、こうやって心の中だったらうまく言えるのにな。どうして言葉にすることは難しいんだろう。快斗くん、快斗くん、快斗くんが好きだよ。 「そっか……」 そしてわたしはそれ以上言えなくなってしまった。どうしよう、付き合ってというべき? え、でもなんか言いたくないな………むかつくから。 「で、で、で、その続きは?」 「……いわなあい」 「なんでだよ、言ってくれよ、ほれほれ」 むかつくう〜! 快斗くんは余裕綽々で、ひょうひょうとしていて、本当に同い年? って思うくらいだ。 「どうした?」 こうやっていじめられてるのも、むかつく反面、嬉しいな、なんて思う。本当に快斗くんのこと、大好きなんだよなあ。わたし。なんでこんな意地悪な人好きになっちゃったんだろ。 「、ほら、言えよ」 「言わない……よ」 でも素直になれないわたし。付き合ってください、その一言が、どうしても言えないよ。 「なあ、よく考えてみろよ。なんで俺に話す時だけ顔が赤いって、知ってるんだと思う?」 ふとそんなことを言われて、わたしはきょとんとする。なんでって、突然そんな質問を投げかけられるなんて思わなかったので、何も思いつかない。 「おめーのことをよーっく見てるからだろ」 あ……れ、顔が赤いよ? 気のせいじゃないよね? しかも不機嫌そうな顔だけど、全然不機嫌じゃないかんじ。どうしよう、どうしよう、ねえ、わたし、どうしよう! 「男が女をよーっく見る理由なんて一つしかねえんだよ」 顔が熱い。それだけじゃなくて、身体全体が熱くて、快斗くんを見るしかできなかった。 「そいつを好きだ、ってことだ」 「あ…えと……快斗くん……つきあ―――」 「俺と付き合え、」 熱に浮かされて、勢いのまま付き合って、と言おうとしたら、快斗くんが先に口にした。 「うん、付き合いたい……っ!!」 「付き合いたい、って、俺が付き合えっていってんのに可笑しいぜなんか」 「あとね、快斗くんと、手をね、つなぎたい!」 「え?あ、おう……! いいぜ」 「手をつないでね、一緒にかえりたい……っ!」 「ぅ……ほらよ、手、貸せよ」 快斗くんに手をかすめ取られて、放課後の学校、誰もいない廊下を二人で歩く。少し早歩きなのは、きっとわたしも快斗くんも気持ちが高揚しているからなんだろうな。 「俺のどこ、好きになったんだ?」 「え!? ひ、秘密!」 「な、なんでだよ! 言えよ!!」 「やだよ! 恥ずかしいよ!!」 「いいから言えよ!」 「っ全部!!!」 勢いに任せて言えば、快斗くんはぴたっと立ち止まった。場所は階段の手前。くるっと振り返って 「っおめーはかわいすぎだ!!」 と怒鳴られた。そしてそのままずんずん階段を下りていく。 「ええ!? か、か、か……!?」 かわいすぎ!? 可愛いだけでなく、かわいすぎ!? もう、言葉が出ません……っ! 幸せすぎてしんでしまいそうです。あっという間にやら学校を出て、校門前までやってきた。 「んちどっちだ?」 快斗くんが振り返った。その顔がかっこよくて、あ、いつもかっこいいんだけどね? きゅんとした。そしたら、「好き」って言葉がフラッシュバックして、心臓がまたバクバクする。また、いってほしいな。と思った。人間の欲望って底知れない。 「か、快斗くん、あの、もう一回いって?」 「え? だから、んちどっ――」 「違うの! その、すきって……」 「やなこった」 即答されてしまった。ずーん、と肩を落とす。もう一回だけ、聞きたかったな。 「……わぁったよ、一回しか言わねえからな」 「うんっ!!」 「好きだ、」 「!!!! も、もう一回!!!」 「バーロー! 一回しかいわねえつったろ?」 「お願い、もう一回だけ言って!!」 「が言ってくれたらいいぜ?」 「す……す………す、すきやき」 「うん、駄目だな」 「そんなあ〜! 快斗くんーっ!!」 好きだよ、好きだよ、好きだよ。 (余裕のないヒロインと、余裕のあるふりをする快斗をかきたかっただけです。) |