「なんでい、このみょうちくりん」
「みょ、みょうちくりん!」

 つんつんとトサカみたいに逆立った髪の毛の、背の高い男の人。相楽左之助っていうみたい。それにしてもみょうちくりんなんて初めて言われた……。

「あっ、です、よろしくおねがいします」
「ふうーん……。ねえ」

 じろじろと上から下まで見られる。なあんで夕飯時にこんなに見られなきゃいけないの。

「お前、頭がいかれちまったやつかと思いきや、未来からきたらしいじゃねえか」
「あ、頭いかれちまった……?」
「ちょっと左之助!!」

 薫ちゃん(距離感が近くなったよ!!)が、慌てたように左之助を小突く。わたし、最初そんな風に思われてたんだ、わあ……。まあしょうがないか、だって、わたしは、テーマパークの気分だったもの。

「ええ、未来からきましたとも」
「ってことはあれだよな、未来の日本ってのがわかるんだろ? ちっと教えてくれよ。酒の肴にしようじゃねえか」
「いいですよー」

 なんだかいい気分。この世界でただ一人しか、未来の日本のことを知っている人はいない。すっごい優越感を感じてしまう。ふふ。

「さて、夕ご飯にしましょ」
「わあい!」

 ごはんだー!!!!



 夕飯はとてもおいしかった。剣心が作ったらしい、いまどきの男は料理もできなくちゃねっ! というけれど、この時代の男の人も料理が出来るんだー。と感心した。男は仕事、女は家事、っていう昔の風習があるから、てっきり料理は薫ちゃんがするもんだと思ったけれど違うみたい。後から聞いた話によると、薫ちゃんの料理は天才的に不味いらしい。

「さあー宴だ! 酒ならたんまりあるから、飲もうぜ」
「あら珍しいわね、左之助が何かを用意するなんて」
「博打で勝ったんでよ」

 左之助の用意した酒は、日本酒ばかりだった。まあ、あたりまえっちゃあたりまえだけど。はあー日本酒って苦手なんだよね。苦いし、美味しくないし。
 縁側で足をぶらぶらさせて、どう酒を拒もうか考えてみる。夕飯前に飲もうと乗り気で言った手前、なんて断ればいいか全く思いつかない。

「ほら、飲め飲め」

 お猪口をわたされて、思わず受け取る。日本酒独特のこのつよーいアルコールのにおいが鼻孔を刺激した。

「うう……。いただきまーす」

 くいっと飲み干す。呼吸とともにやってきたのは、米の甘さと、のどを焼き尽くすような感覚。


「いいねえ、。どうだいもういっちょ」
「うう……いや、ちょっと休憩……」
「なんでい、まだ飲めるんだろ?」

 無理やり注がれて、あからさまにいやそうな顔をしてみたが、そんなことを気にする左之助ではない。ほれ、と顎でやられて、渋々飲み干す。すると左之助がひゅー、と口笛を鳴らした。

「いけるねえ、みょうちくりん。」
「無理はするなよ、

 いつの間にやらやってきた剣心が隣に座って、苦笑いをした。わたしもそこまでお酒は強くない。そしてそれを自分でもわきまえているからもちろん無理はしないつもりだ。

「なあにいってんだ剣心、誰のための宴だと思ってんだ」
「そうはいっても無理はいかんでござるよ」
「そうだそうだあ! 大体、わたしが飲んで左之助が飲まないなんてダメだよ、ほらのみなよ!」
「わあってるって。よしチビ、勝負しようぜ。最後まで立っていたほうの勝ちだ!」
「チビじゃない! 左之助が大きいだけ! 勝負だ!!」

 ちょっぴりお酒がまわって陽気なわたしが勝負を受け立った。