俺と、兄貴と、そして。俺たちは小さいころいつも一緒だった。
とくに俺とは年が一緒って言うこともあって、学校も、教室も、登下校も、両親が死んだときも。
ずうっと一緒だったんだ。だから、自然といろんなことが一緒になっていった。
口癖だったり、しぐさだったり。それらは全部、俺からへ伝染していったんだ。

「潤ちゃん、潤ちゃん、見て。」

隣を歩くが、すっと前方を指差して笑った。
俺はの指先を視線で辿ると、目の前には真っ赤な夕日が煌々と燃えていた。
とても美しい光景だって事は、俺にだってわかった。

「うおー!すげえな!こんな綺麗な夕日、なかなか見れないぜ!」
「うん!すごい綺麗よね。えへへ、お兄ちゃんにも見せてあげたいなあ…。」

お兄ちゃん、って言葉を聞いた瞬間、俺の心臓に、こう、ぐさっとナイフが突き刺さった
感じがした。少し前から、そうなんだ。理由はとっくにわかってる。

俺が、を、好きだから。
嫉妬してるんだ。兄貴に。

「いいじゃん、俺とだけの二人だけの夕日!」
「なるほど、それもいいかもね。じゃあ、私と潤ちゃんだけの景色ね。」

俺の胸が、なんていえばいいのか、ぎゅう、と締め付けられて、何か暖かいものが
広がっていった。

「ね、。」
「ん〜?」
はさ、好きな人いるの?」

思えば、初めてこんな話題を相手に口にした。幼稚園のときも、小学校のときも、中学のときも。
ちなみに小学校のときからずっと好きだったわけだけど、
今更こんな話題を口にするのは、やっとと真剣にぶつかり合えると感じてきたから。

「いるよ。」

やけにきっぱりと言い放った。
少し拍子抜けして、を唖然と見ると、今まで見たことないような笑顔を浮かべて彼女がいた。
俺の中の、時間が一瞬止まった。

「……、潤ちゃん?」
「――――あ、ご、ごめん。そうなんだ。で、相手は誰なんだよ?」

俺であればいいと願うのは、いけないかな。愚かかな。
君の答えが聞きたい。けど、聞きたくない。ありがちなアンビバレンスな感情が俺を狂わせる。


「私、お兄ちゃんの事が好きなんだ。」

俺は力なく笑って、そっか。とだけ言った。
それ以上の言葉はどうにも紡げそうにない。いつもそうだ。君は、いつもそうさ、



君は僕の真似ばかり

(俺も兄貴の事、好きだよ。)(俺はへの気持ちを忘れるために、詩織と付き合うことにした。)