ああ、神様。こんなわたしを許してくださいませ。 ジョナサンさまがこの上なく好きです。ですが、ディオさまに何をお返ししようか考えるのが楽しいのです。決して、ディオさま好きなわけではないですが、わくわくしてしまうわたしをどうかお許しください。だって、誰かに贈り物なんて身内以外に、生まれてこの方まともにしたことがありません。 ディオさまはなにが好きなのでしょうか。 ディオさま、ディオさま、ディオさま………。 ジョースター邸の窓を拭きながら、ぼんやりと今は学校へいっているその人へ想いを馳せます。家具がほしいと言っていたので、家具がいいでしょうか。いやでも、リボンのお返しに家具って、逆に気を遣わせてしまうでしょうか。なんだか、大きすぎますよね。 あ!! いいことを思いつきました!! 紅茶です、紅茶ですよ!ディオさまの淹れる紅茶は格段に美味しいのです! きっと、ディオさまが好んで飲まれるから、淹れるのもおいしいのです。ですので茶葉を贈りましょう。そうしましょう! わーい、いいアイディオ……じゃない、アイディアです! 午後の暇を利用して、早速街へ繰り出しました。確か紅茶専門店があったはず、と思い記憶を頼りに探すと、やっぱりあって、わたしはそこで、アールグレイの茶葉を買いました。 よくわかりませんが、店員さんにおすすめされたので、きっとおいしいのでしょう。帰路の途中、綺麗に包装された茶葉をちらっと見て、思わず顔がほころびます。喜んでくださるとうれしいです。 The Moon Longed for The Sun午後のティータイム学校から帰り、自室で学校の宿題をこなしていると、こんこん、とノックが鳴った。どうぞ、というと、入ってきたのはだった。その手に何か持っている。 「ディオさま、これ、お返しです」 ぼくの近くへ寄ってきて、にこにこと、相変わらず阿呆臭い笑顔で渡された。ああ、この間のリボンのか。あれ以来毎日リボンをつけていて、まあ、悪くない心持といったところだ。 しかし、本当にお返しをくれるとはな。しかもこんな早くに。 「ありがとう。嬉しいなあ。このパッケージ、紅茶の茶葉かい?」 大げさに驚いてやれば、得意顔になる。 「ええ! さすがディオさま、ご名答です」 「この間、一緒に紅茶を飲んだからかい?」 「はい、とっても美味しかったので。ディオさまは紅茶がお好きなのかなあ、と思いまして」 別に好きなわけじゃあないが、まあ合わせてやるか。 「ああ、紅茶は好きだぜ。ありがとう、すごくうれしいよ」 「はい! とんでもないです! 今度また、一緒に紅茶飲みましょうね!」 「今度と言わず、今から飲まないか?夕飯まではまだ時間があるし。まだ仕事はある?」 「あ、ないですが、宿題は大丈夫ですか……?」 「大丈夫、殆ど終わっているから」 「本当ですか! よかったです。ではジョナサンさまも誘ってきますね!」 待てーーーーーーーッッ!! どうしてそんなことになった!?嬉しそうに俺の部屋を出て行くんじゃあない!! 突拍子がなさすぎる! では、ってなんだ、では、って!!自分の中で解決するんじゃあない!! なんていう文句を、阿呆女が出て行った扉を見ながら心の中で言っているのだが、伝わることはなく。まあ、伝わられても困るのだが。ほどなくして阿呆女がジョジョを引き連れてやってきた。君も断れよ、ぼくとお茶して楽しいのか?もいるが、和気藹々と茶を飲むと思ったか。ぼくが君をいびるのは予想できないわけじゃあないだろ。 「あ、わたし、お茶菓子持ってきますね!」 「ぼくも行くよ」 「大丈夫ですよ、一人でも行けます」 「いいや、ぼくも行く。女性の荷物を持つのも紳士ってものだろう。それにティーセットもないじゃないか。とても一人じゃ持ちきれないだろう?」 「むむ、本当です、すっかり忘れてました。じゃあ、すみません一緒に行きましょう。ではディオさま、少々お待ちくださいね」 ぼくの部屋にやってきてそうそう、二人はべらべらとしゃべって、風のように去っていった。 ―――気に入らん……。 なんなんだ、この疎外感。ああ、イライラする。まだ奴らの仲には入っていけていないということか。、想像していたよりも攻略が難しそうだ。へらへらしているものだから、あっさり落とせるかと思ったが。まあ、難しければ難しいほど燃えるというものだ。 あの夜、悩ましげに、しかし幸せそうにぼくに対してジョジョを語ったように、いずれこのディオこともそんな表情で語らせてやる。「ディオさまには内緒にしておいてくださいね」とな。 「お待たせしましたディオさま!」 「ディオ、クッキーでよかったかい?」 「ああ。」 そうやって仲よさそうにしてるのも今のうちだ。 |