「が男だったらなぁ……」 「悪かったね、女で」 「ー……」 「うるさいなぁ……わたしは、女の子。それ以上言うなら、怒るよ」 ぶすーっと顔を歪めると、隣に座っている蛇骨が肩を掴みわたしを引き寄せた。 「冗談、冗談。泣かしたら蛮骨の大兄貴に何されるかわかんねーからな」 「……蛮骨のため?」 蛇骨が蛇骨の意志で、じゃないならあんまり嬉しくないな。我儘でごめんなさいね。 「なんだよ文句あんのか?」 「ないです」 「だよなー」 なにが、だよなー。だよっ。本意じゃないよ、気付いてよ。 「なに変な顔してんだ?」 「元からです」 「ばーか。俺をなめてんのか?もっと可愛い顔してんじゃねーか」 蛇骨の綺麗な顔がわたしにぐいと近づき至近距離で見つめられて思わず照れる。肩には手をおかれ、顔はキスができちゃうほど近くて、て、あれ? 「!!!」 「なんで拒むんだよっ! なんか不満があんのかよ?」 キスされかけて咄嗟に顔を逸らしてしまった。び、びっくりした……。蛇骨がショックを受けた様に眉をひそめた。 「や、その、びっくりして……」 「そんだけ?」 「う、ん」 「じゃあしても異存はねえってやつ?」 なに、なんでキスしようとしてるの? 犬夜叉可愛いだとか、可愛いだとかいってて、ちっともわたしのことなんて見なかったくせに、どういう意図で 「ないような、なくないような……」 「あ? どっちだよ?」 「わかってよ!」 「わかんねーよ! だから女はいやなんだよな」 わたしはすっと立ち上がり宛てもなく歩きだした。悲しかったのだ、いい加減女がどうだとか言われたのが。 「おいなんだよ、!」 蛇骨が追いかけてきた。 「もう帰る……」 「はあ? 犬夜叉んとこに?」 「そう!」 「じゃあ俺もいく!」 無邪気に言った蛮骨に、とうとう堪忍の尾が切れた。罵声の一つでも浴びせてやろうかと思いくるりと振り返ったときだった。肩を掴まれたと思いきや、今度は顎を掬われ、キスされた。 浴びさせようとした罵声はそのキスによって吸い込まれたかのようにすっかり消えた。 ようやくして、唇が離された。 「なあ、まだわかんねえの?」 「……なに?」 「なんで俺がお前に接吻しようとしたと思うって聞いてんだ」 「そんなの、知らないよ」 「俺がお前を好きだから、それ以外の理由があるか?」 蛇骨が、お前ことわたしを好き? だからキスをしたの? どういうことかな。この事実がわかりそうで、わからない。 嘘、わかる。でも認めていいものか迷ってる。 「……おい聞こえてんの? 俺の一世一代の告白」 照れたように頬を赤くして眉を寄せている。わたしの頑なな頭は、そろそろ認め始めた。 「聞こえてるよ」 「それでも帰るっていうのか?」 「……帰らない」 「ったりめーだ。おら、面あげな」 「ねえわたしだし女の子だよ? いいの?」 「っつう女を愛してんだよ。いけねえか?」 「……いけなく、ない」 わたしたちはふたたび唇を重ねた。 |