瑠璃くんはかっこいい。それに、優しい。ちょっとぶっきらぼうだけど、そこに隠れた優しさがわたしの心を捉えて、そして離さない。いわゆるぞっこん状態だった。

、重いだろ」
「あ、だいじょ―――ありがとう」

 わたしの持った荷物をちらと見てたずねた瑠璃くんだが、大丈夫とわたしが言う前にわたしの荷物をひったくる。そんな優しさ。きゅん、と心臓がちぢこまった。少し先をいく瑠璃くんの背中にわたしは(だいすき)と心の中で呟いた。
 すると瑠璃くんはくるりと振り返り立ち止まった。わたしも立ち止まり、瑠璃くんの言葉を待つ。もしかしたらわたしの心の声が聞こえてしまったのだろうか……? なんて一瞬本気で考えたが、まさか、と思いなおす。


「うん?」
「手を繋がないか?」

 そういって荷物を持っていないほうの手をさしだした。わたしはみるみる顔が熱くなっていくのを感じた。この手をとればわたしと瑠璃くんは手を繋げる。しかしわたしはあまり手を繋ぐのが得意ではなかった。緊張しすぎて饒舌になってしまうし、やけに手汗をかいてしまう。なにより瑠璃くんとの距離が急激に縮まる。瑠璃くんは好きだ。でも、わたしからしてみれば瑠璃くんは高貴な存在でわたしのような存在が近くにいてはいけない気がするのだ。

「どうした?」

 躊躇うわたしに瑠璃くんが首をかしげる。いけない、手をとらなければ。けれど手をとりたくない。

「あ、うん」

 わたしは恐る恐る手をのばし、瑠璃くんのてのひらにわたしのてのひらを重ね合わせようとする。ゆるりと縮まる距離。刹那、瑠璃くんはわたしの手をとって、ぎゅっと握った。感じる瑠璃くんの温もりに心臓が早まる。そのまま瑠璃くんは歩き出して、握っていた手はやがて絡められた。指ひとつひとつに瑠璃くんを感じる。

、顔が赤いぞ」
「えっ、そう?」

 指摘されてますます顔が赤くなっていく。そんな様子を瑠璃くんはくすくすと笑った。ああ、笑われてる………。わたしは俯いて、赤くなった顔を見えないようにした。

は手を繋ぐの、やたらと照れるからな」
「う、うん。ばれてた?」
「当たり前だ。いつも顔が赤くなって、目が泳いで、いちいち躊躇っているからな」
「目ざといなぁ……。だって、慣れないんだもの」
「いいんだ。そんなが俺は好きだよ」

 はっと瑠璃くんを見上げると、瑠璃くんはわたしに涙が出そうなくらいやさしい微笑みを向けてくれた。こんなわたしを好きでいてくれるの? そんなわたしの心内の問いに応える無償の愛の微笑み。

「……ありがとう」

 笑顔がやっぱり眩しくて、わたしは礼を述べた後すぐに前をむいた。

「手を繋ぐのを躊躇うなら、俺がの手を取ればいいんだからな」
「なるほど、」
は俺に手を取られればいいだけだ。それで俺たちはうまくいく」

 運命の赤い糸はもしかしたら、自分の半身として生まれた人と結ばれているのかもしれない。お互いの不足をお互いが補うことで、はじめて一人前になれる相手。それを導く赤い糸。
 だとしたらわたしの運命の赤い糸の相手は間違いなく瑠璃くんで。いつまでも、躊躇うわたしの手をとってください。



ほら、こんなに簡単。