風の噂。当人から聞いたわけじゃないけど、いろんな人から聞く風の噂。その噂は本当かどうか、わたしは興味があった。

「瑠璃くん」
「ん?」

 わたしたちは、魔法都市ジオに遊びに来ていた。ジオといったら、魔法学園とかクリスティーヌさんの宮殿とかが有名だけど、意外と遊べる場所だったりする。今はフルーツパーラーで果物をつまみながら、他愛ない話をしていた。

「噂で聞いたんだけどね」
「ああ」
「瑠璃くんて、わたしのこと好きなの?」

 いや、あのね、別にわたし、不思議ちゃんとかじゃないから、ルーベンスさんの髪の毛触ったことある? とかそういう日常会話的なノリの、気軽な気持ちで聞いたわけじゃないんだよ。これは、もはや一世一代の賭け。わたしは瑠璃くんが好きで、できるものなら付き合いたいとか思ったりする。そんなわたしのもとに、

(瑠璃くんって、ちゃんのこと好きらしいよ)

 とかいう噂が舞い込んできちゃったりしたら、そりゃ私は嬉しくて叫んじゃったり意味もなく大爆笑したり鏡の中の幸せそうな自分を見てニヤってしたりしちゃうよ。情報源? それはプライバシーとかあるから言えないけど、イニシャルはE。これ以上は言えないよ。
 この幸せを確かなものにしたくて、わたしは瑠璃くんに思い切って聞いてみたわけです。これで、『なんだその噂? そんなわけないだろ』なんて冷たくあしらわれたときにはもう、今日の夜は枕を涙でぬらしちゃうよ。
 でも、でも……もしも肯定されちゃったりとかしたら、これからわたしはもう、幸せの世界へいらっしゃいませーしちゃいますよ。
 瑠璃くんを、恐る恐る見てみる。

「……」
「……」

 瑠璃くん……。

「……」
「……」

 あなた……。

「……」
「……」

 顔真っ赤……。

「……」
「……」

 目が合った瞬間そらされたし……。

「……」
「……」

 むしろ……。

「……」
「……」

 耳まで真っ赤!!!!

「……」
「……」

 あの、これは、もしや

「好き、なの?」
「……バレてたのか」

 神様仏様マナの女神様エメロード様!! ファ・ディールにありがとう!!!  、とっても幸せです!!!



耳まで真っ赤。