サルタンは今日も暑い。

「おはようちゃん」
「おはよう」

 今日もいつもと同じ毎日。朝起きて、仕事をして、帰ってきて、おやすみ。夜になるとたまにやってきた義賊の彼は、今はもう現れない。彼は追われる身で、既にこの砂漠からは姿を消しているから。
 彼は今頃どこで何をしているんだろう。盗賊としての技量は、私はよく分からないけど、ナバール盗賊団の中では随一って言っていたから、あ、本人がね。だから本当かどうかは分からないけど、腕があればどこかで何かやって生きてはいるだろう。芸は身を助く、っていうし。
 だから心配なんかしてないけど、けど、

「ホークアイ……」

 毎日毎日、あなたのことが頭から離れないの。元気にしてる? ちゃんとご飯食べれてる? いつものように女の子を口説いてる? ……ねえ、生きている? 生きているって信じてるけど、でも、やっぱり気になるよ。生きてさえいてくれればあなたは心配ないよ。顔だってかっこいいし、人の気持ちを推し量れるし、器量もいい、どこにいたってあなたは器用に立ち回って生きていける。
 でも心配ないのは、生きていれば、なんだよ? ねえ、生きているよね。生きているって、おれは新天地でうまくやってますって、一言でもいいからちょうだい。そして私は、こうやって言うの。生きててよかった。あなたに会えないのはとても寂しいけど、でも、元気でね。って。だって



 背後から聞こえてきた声は幻聴だろうか。待ちわびて、待ちわびすぎていよいよ私の耳はおかしくなったのだろうか。ここにいるはずがなくて、ずっと聞きたかった声で。じんわりと瞳から涙があふれてきて、頭でわかるよりも先に身体が先にこの事実を受け止めているみたいだった。どれだけ時が経っても、この耳はわすれていないものなんだなあ。
 サルタンの町を歩いていた足はぴたっと止まった。

「ただいま」
「遅いよ」

 おかしい。私の予定では、生きててよかった。って、言うはずだったのに、口をついて出た言葉は、予定とは違った言葉だった。

「いい子で待ってた?」

 褐色の男は、美しい紫色の髪をなびかせて、私の前に躍り出た。私の知っている彼よりも大人びていて、私の心臓がいつもよりも早く動く。ドキドキ煩くて、自分の心臓の音で鼓膜がいっぱいになりそうになってしまった。

「うん」
「おいで」

 あの頃と変わらない屈託ない笑みで両手を広げた。吸い寄せられるように彼のもとへと歩みを進め、私と彼の距離はゼロになる。

「待たせちまったな」

 よしよし、と頭をぽんぽんと撫でられる。

「ほんっと遅い、ばかばか、ホークアイのばか」
「おいおい、すっげー言うじゃねえか。ちゃんってばちょっと会わない間に性格悪くなった?」
「責任取ってよ」
「あったぼーよ。、ほんとに待たせてわりぃな。一緒になってくれるかい? もう二度といなくなったりしないから。あ、いや……」

 ぐいっと身体が離されて、私たちは見つめ合う。え、なに、さっきのプロポーズ? で、すぐそのあとに、あ、いや……っていってたけど、言ってすぐに撤回? どういうことかわからず私はホークアイの言葉を待つ。

「こんな大事なこと、顔を見ないでいうのは筋違いってもんだな。、もう一度言わせてくれ」
「は、はい」

 今日はいろんなことが起こりすぎて、なんだか理解が追い付かない。

「おれと一緒になってくれ。もう二度といなくなったりしないし、おれがを幸せにする。ていうか、一緒になれ。には、おれだろ?」

 なにその上からプロポーズ。いや、プロポーズなの? さっきまでの緊張とか、ドキドキとかが嘘のように今はあの頃の私たちだ。
 私が何も言えないでいると、ホークアイは心配そうに眉を下げて、あれ? と小さく声を漏らす。

「もしかして……もう結婚してる?」
「おっそいよ、ホークアイ」

 すっと左手を見せれば、ホークアイは焦ったようにかっと目を見開き、やがて何のリングもついていない左手に気づいて、むっと眉を寄せた。

「どういうこと?」
「私を待たせた罰だよ」

 私が笑みを浮かべれば、ホークアイも観念したように笑みを零した。

「結婚なんてしてない、ずっとホークアイを待ってた。幸せにしてくれるの?」
「ああ、もちろんだ。世界をまたにかけた俺様の奥サマになるんだ、そりゃあ幸せになること間違いなしだぜ!」
「ふうーん」
「あっ、もちろん、指輪はまだ! 今から買いに行こうぜ!」
「あ、まってよホークアイ! ねえ、今までどこに行ってたのよ? ホークアイってば」

 彼を追いかけながら問いかければ、ホークアイは顔だけ振り返って、しっ、と人差し指を口元に持っていく。

「詳しいことはベッドの上で、な?」
「ちょ、昼間っからなにを……」
「早く行こうぜ!」

 差し出された手をとり、私たちは同じ速度で歩みだした。




祝!聖剣伝説3フルリメイク発売決定!!ということで、
この日を随分前から待っていました。聖剣伝説3が移植されただけでも万々歳だっていうのに
それから数年後にフルリメイクが出るとは……神さまスクエニさま。本当にありがとうございました。
次はLOMがリメイクされるんじゃないかなって個人的には睨んでます。
リメイクじゃなくて、私は移植で全然満足ですけどね。
またアレクサンドルに会えるなんて……!(まだ決まっていない)

と言う訳で、今回のお話は、随分フルリメイク待ったぞ!という作品でした(笑) 010615