「くん、くん、これ、あげるわ」 「えっ僕にくれるの?」 と同い年くらいの女の子が、あどけない笑顔を浮かべてに石をあげていた。はその様子を少し離れたテラスで紅茶を飲みながら眺めていて、少し感心した。 「ってば、もてるのねえ」 「たしかに」 小さな声で肯定したのはの妹ので、彼女はオレンジジュースを飲みながら顔に似つかぬ険しい顔でと女の子を眺めていた。 「……なんでそんなに険しい顔をしてるの?」 「べつに、してないよ。」 といいながらもの眉は寄っていて、穏やかとは言えない顔だった。そうこうしているうちにいつの間にかが帰ってきて、しまりのない顔で石を眺めていた。 「おかえり、かわいい石ね」 「ね、うれしいな〜」 「ばっかみたい」 ぷい、とがそっぽを向いてどこかへ立ち去ってしまった。取り残されたとは、きょとん、と目を丸くした。 「……怒ってる?」 「そうみたいだね」 もしかしたら、やきもちをやいているのだろうか。 「僕いってくるね!」 が石をおいて、を追って駆けだした。 「……まるで恋人同士ね」 といって、は小さく笑った。それから二人が帰ってくるまでは紅茶を飲んで待っていたのだが、一杯目を飲み終えるころにがひょこ、とこちらを覗きこんできた。 「おかえり、は?」 「え、会ってないよ」 「あら。それじゃあここで待ってたらそのうちも帰ってくると思うよ」 するとは浮かない表情でひとつうなづいて、オレンジジュースを再び飲み始めた。 「、さっきはどうしたの?」 はオレンジジュースを飲むのをやめて、黙り込んだ。 「わたしにはいえないこと?」 「……あのね、なんかよくわからないんだけど、が女の子にでれでれしてるの見てたらむっとなっちゃって」 「なるほどね」 やっぱりやきもちか、と思い、なんだか可笑しな気持ちになる。ほんと恋人のようだ。 「じゃあさ、同じことをわたしがにしたらどう思う?」 「全然平気よ。だって、ちゃんだもん!」 「こーんにちはさま! さま! 探しましたよー!! 今日も麗しいですね!!」 「げっ……。」 が露骨にいやな顔をした。つまりピピンの登場である。ピピンはとは対照的に、ナハナハ笑いながらこちらにやってきて、椅子に腰かけた。 「ピピン、仕事は?」 「今日は半休です! つまりいま、休みなんです!」 「あらよかったね」 「ねえーピピンったら、いま私とちゃんはまじめな話をしてたのよ!」 「そうなのですか! もしかして恋愛のお話ですか?」 「ちがーう! もー、ピピンったら」 「あのねピピン、が女の子にプレゼントをもらったのよ」 これ、といって石を指差すとピピンがへえー、とうなづいた。 「じゃあこれはどうです? さん……僕と一緒になりま―――」 「「だめー!!!!!」」 二つの甲高い声がピピンのプロポーズをさえぎる。一人はすぐそばので、もう一人は、ちょうどよく戻ってきただった。がすぐさま駆けよってきて、椅子に座っていてるの腰に抱きついてピピンから引き離そうとする。 「?」 「ちゃんピピンと結婚しないでよ!」 「しないよーかわいいなあ、まったく」 「しかしさまも大人になられたらきっと美人になるのでしょうなあ。将来が楽しみです」 「!!」 が今度はとピピンの間に立ち、守るように両手を広げた。 「とも結婚しちゃだめ!!」 「……!」 「だーいじょうぶですよ! 僕はさましか見えてませんから! はっはっは!」 「それはどうも」 ピピンが誰と結婚するかは置いといて、どうやらピピンのおかげでの機嫌は治ったらしい。 「、さっきはおこらせちゃってごめんね」 「ううん……おこってなんてないよ。わたしこそごめんね」 二人の可愛らしい様子に顔がゆるむのを感じる。ほんとうに兄の残したこの双子はいちいち可愛らしい。 「ほんっっっと、かわいい!」 とを丸ごと抱きしめる。 「ああー羨ましい! さま僕のことも抱きしめてください!」 「べー! いいだろピピン!」 「ちゃんは私たちの物なんだから!」 の肩越しでピピンと双子が会話する。 「そうよ、わたしはずーっとあなたたちの!」 「「ちゃんだいすきー!!」」 「僕もだいすきでーっす!!!」 |