いつもどおり隣を歩く二人は、付き合う前もそれからも変わらないように見える。だが互いを意識してか、少しだけ(本当に少しだが)距離が遠くなっている。それでも仲良く会話を交わす様子はとても幸せそうだった。 「ところでクリフト」 「なんでしょう」 「クリフトって神さまに仕えているのですよね?」 「そうですよ」 神官と言うのは神に仕えているのだと小さい頃に教えたのをぼんやりと思い出す。 「なんの神さまなんです?」 「本当に興味があって聞いてます?」 「ええ、もちろんですよ」 「クリフトのことは何でも知りたいです」 「また、嘘くさい顔でいうものです」 「神官、と言う職業にも非常に興味があるんですよ? ああでもたまに、神官とは思えない行動もたまにしますよね」 なにかを思いだしたのか、がふふ、と小さく笑う。クリフトはの言う”神官らしくない行動”が気になった。 「なんですかその、神官らしくない行動って」 「たとえば、誰かをえこひいきしたりとか、ですね」 「失礼な。私えこひいきなんてしませんよ」 「してるじゃないですか。アリーナ様」 神さまに仕えるものとしては、誰にでも平等がセオリーなのでは? と、がクリフトを見上げた。するとクリフトものことを見ていて、不意に視線がかちあった。二人は顔を赤くして急にそっぽを向く。 「あっ、ああ、あ、アリーナさまはと、特別ですから!」 「そ、うですか……」 なんとなくしゃべりづらい雰囲気になってしまった。だがこの雰囲気を確かに楽しんでいる二人。恋人たち特有のこの甘いそれは、十分に二人を酔わせる。 「……」 「はい……?」 「こんなことをいうのは柄じゃないと思うし、神官らしくないと思います」 「? はぁ」 「でも最近、よく感じるので、聞いてほしいんです」 「ええ」 なかなか本題を切り出さないクリフトを不思議に思ってちらり、今度は盗み見るように見てみると、彼はまっすぐ彼方を真っ赤な顔で見つめていた。彼の視線をたどって見るが、視線の先にはトルネコがライアンと談笑しているだけで、別に顔を赤くする要素なんて少しもない。ではいったい、と考えたところで、クリフトが切り出した。 「は私にとって、女神様のようです」 「ええ!?」 「さえそばに居てくれれば何でもできそうな気がするんです。あああなにをいってるんだ私は!」 頭を抱え恥ずかしがっているクリフトがなんだか愛おしくて、は立ち止まり、くい、と服のすそを引っ張った。 「嬉しかったですよ。では、他の神さまにウワキしちゃダメですよ?」 小首をかしげて言えば、クリフトは頭をたてに何べんも振る。その様子がおかしくて少し笑ってしまった。 「だけ、だけ見ています。いつだって。あなたにのみ仕えましょう」 「は?」 「そ、それは……」 「アリーナさまは?」 「そ、それは………」 「うそです。ちょっとからかってみました。わたしたちはアリーナさまに仕えていて、それで勇者さまであるのお供をしているのですよね」 本気で困ってしまったクリフトがなんだかかわいそうになってしまった。再び二人はみんなからの遅れを取り戻すために歩き出した。 「でも、私は、確かにアリーナさまに仕え、さんに仕えていますが、私自身、私の心はいつだってあなただけを一途に思っています。それを忘れないでください」 「はいっ。なんだか嬉しいですね」 はにかみ笑顔が眩しいの手をとり、二人は手をつないだ。 親愛なる女神さま (意外とアンケートで人気の高いクリフトさん。) |