「ただいまー! もう、突然雨に降られてやんなっちゃうね」

 水をかぶって男になってしまったが、がらがら、と天道家の玄関の引き戸を開けた。先に帰って居間でくつろいでいたあかねだが、の声を聞いて、胸がどきりとした。

「あらあらちゃん、大丈夫?」

 すかさずかすみがバスタオルを持って玄関へ向かった。タオルを受け取ったはがしがしとまず頭を拭いて、次に露出している部分を拭き、ふう、と息をついた。

「ありがとうかすみさん。お風呂入っていい?」
「あらごめんね、今日ちょうどガスが故障しちゃっててお風呂が使えないの……」
「そうなんですか。じゃああとであかねと一緒に銭湯にいってきます」

 かすみと離しながらは靴を脱いで、ぱたぱたと居間まで早歩きする。居間に入ると、あかねと目が合う。しかしあかねは目を見開いて顔を赤くする、とふい、と視線を逸らした。

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「ただいまあかね、乱馬はまだ帰ってないの?」
「う……ん」

 男になったはとってもかっこよくて、直視できない。それだけじゃなくてどきどきするんだ。いつもと違って低い声、程よく筋肉がついた体つき。けれど中身は女の子で、物腰柔らかい喋り方をするからかっこよくて優しい男の子そのもの。

「そっか、じゃあ乱馬も雨に降られてるね。しかもお風呂に入れないから、ずっと女の子だ。ふふ」
「そうね」

 があたしの隣に座る。どきどき、どきどき。

「あ、」

 と言ったと思ったら、はあたしをじっと見つめる。とんでもない早さで動くあたしの心臓。に聞こえやしないかと、少し不安になる。

「あかね、目を瞑って」

 えええええ!?!?!?
 の笑顔からは何も窺えない。言われた通り、あたしは目を瞑る。いまのは男の子で、だからつまり、それがいま、すべてで、つまりその

「……あかねって、まつ毛長いんだね」
「へ?」

 目を開けると、楽しそうな顔であたしを見ている。どうしよう、いまわたし、キスされるって思った……。しかも、されてもいいって思ってた。
 ねえあたし、どうしよう。





好きだなんて、言えないよ。